インタビュー対象者プロフィール
- 名前: 前田 裕介さん(仮名)
- 年齢: 31歳
- 経験年数: ドライバー歴7年(中型・大型)
- 勤務先: 運送会社
- 資格: 大型免許、フォークリフト運転技能
- 業務: 食品配送(ルート配送+スポット便)
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Q: どのような問題がありましたか?
配車担当の係長が典型的なパワハラ体質でした。ドライバーに対して「お前の代わりはいくらでもいる」「文句があるなら辞めろ」が口癖。無線で怒鳴りつけるのは日常茶飯事で、他のドライバーの前で「前田は使えない」と言われたこともあります。
一番ひどかったのは、物理的に無理な運行指示です。法定の連続運転時間(4時間)を超えるような配車を平気で組む。「休憩は荷待ち時間にしろ」と言われるんですが、荷待ちは休憩ではありません。デジタコ(運行記録計)には休憩として記録されるけど、実際にはフォークリフトで荷積みしている。
Q: 法令違反の指示もあったのですか?
はい。改善基準告示(ドライバーの拘束時間のルール)に違反するような運行が常態化していました。1日の拘束時間は原則13時間(最大16時間)ですが、15時間、16時間の拘束が週に3〜4日。月の拘束時間も上限(原則284時間)を超えていました。
これを配車係長に指摘すると、「細かいこと言うな」「他のドライバーは文句言わないぞ」と逆ギレ。運転日報も実態と合わない時間で書くよう指示されることがありました。記録の改ざんです。
Q: 我慢の限界を感じたのはいつですか?
冬のある日、大雪の中で配送を命じられたときです。高速道路が通行止めになって、一般道で迂回する必要がありました。「到着が遅れる」と連絡したら、「遅れたらお前の責任だからな」と。路面凍結でスリップしそうな状況で、命がけで配送している人間に対する言葉がそれかと。
その日の帰り道、「このまま事故を起こしたら会社は責任を取るのか」と考えたら、急に怖くなりました。自分の命を預けるに値しない会社だと確信しました。
Q: 退職に向けてどう動きましたか?
まず証拠を集めました。配車係長からの理不尽な指示はスマホで録音。デジタコのデータと実際の運行が異なる部分は、自分でメモに記録。これは後から労働基準監督署に相談する際に役立ちました。
同時に転職活動を開始。食品配送の経験を活かして、大手食品メーカーの物流子会社に応募しました。大手は法令遵守がしっかりしていて、労働時間管理も厳格。面接で「前職ではコンプライアンスに問題があった」とまでは言いませんでしたが、「法令を遵守した運行管理の会社で働きたい」とアピールしました。
内定が出てから、所長に退職を伝えました。配車係長ではなく所長に直接。「一身上の都合で退職します」とだけ。配車係長は「裏切り者」と言っていたそうですが、もう知ったことではありません。
Q: 退職届の書き方で工夫した点は?
退職届は「一身上の都合」でシンプルに。パワハラや法令違反のことは書きませんでした。それは退職届ではなく、別のルートで対処すべき問題です。
退職後、労働基準監督署にパワハラと改善基準告示違反を通報しました。録音データとメモを証拠として提出。未払い残業代の請求も行い、結果的に約80万円が支払われました。
Q: 転職後はどう変わりましたか?
大手食品メーカーの物流子会社では、運行管理が法令に基づいて厳格に行われています。拘束時間は必ず基準内、連続運転時間もきちんと管理。デジタコのデータと運転日報が一致するのが当たり前。
「これが普通の会社なんだ」と実感しました。配車担当も丁寧で、「この配送、時間的に大丈夫?」と確認してくれる。ドライバーを人間として扱ってくれる会社がある。年収は前職とほぼ同じですが、拘束時間は月に40時間以上減りました。
Q: パワハラに悩んでいるドライバーにアドバイスはありますか?
「運送業界はどこも同じ」と思わないでください。法令を守って、ドライバーを大切にする会社は確実に存在します。今の会社が異常なのであって、業界全体がそうではありません。
パワハラや法令違反の証拠は必ず記録してください。録音、メモ、写真。デジタコのデータと実態が異なる場合はその記録も。退職後に労働基準監督署や運輸局に通報することで、未払い残業代の回収やパワハラの是正につなげられます。
退職届は感情を排して事務的に。パワハラへの怒りは、法的手続きで晴らすのが正解です。そして大手や中堅の運送会社に転職することで、まともな労働環境を手に入れてください。ドライバーは人手不足です。あなたを必要としている会社は必ずあります。