インタビュー対象者プロフィール

  • 名前: 山本 和也さん(仮名)
  • 年齢: 34歳
  • 経験年数: ドライバー歴10年(大型長距離→地場配送)
  • 勤務先: 運送会社
  • 資格: 大型免許、危険物取扱者乙種4類
  • 家族構成: 妻、長女(8歳)、長男(5歳)

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Q: 家庭との両立でどんな問題がありましたか?

長距離ドライバーは家を空ける日が多いんです。私の場合、週に3〜4日は家に帰れませんでした。月曜の夕方に出発して、水曜の朝に帰宅。木曜の夜にまた出発して、土曜の昼に帰る。そんな生活が10年。

子どもが小さいうちは「パパはお仕事」で済んでいましたが、長女が小学校に入ってから「パパ、参観日に来て」「パパ、運動会の練習見て」と言われるようになって。でも、平日は走っているから行けない。妻から「あなたがいない間、私一人で全部やっているの、分かっている?」と言われたときは返す言葉がありませんでした。

Q: 奥様との関係は大丈夫でしたか?

正直、危機的な時期がありました。妻はパートをしながら二人の子どもの面倒を見て、学校の行事も一人で対応。長男が熱を出してもパートを休めない日は、実家の母に頼むしかない。「ワンオペ育児」そのものでした。

ある日帰宅したら、妻が泣いていたんです。「もう限界。一人で子育てするなら、結婚している意味がない」と。離婚という言葉は出ませんでしたが、その一歩手前だったと思います。

Q: 退職を決めた経緯は?

妻の涙を見たあの夜、二人で朝まで話し合いました。選択肢は3つ。1つ目は「妻が仕事を辞めて育児に専念」、2つ目は「自分が短距離に異動」、3つ目は「転職して家にいる時間を増やす」。

会社に短距離への異動を相談しましたが、「長距離を走れるドライバーが足りないから無理」と断られました。そうなると、転職するしかない。

妻と一緒に家計を見直しました。長距離を辞めると年収は100万円くらい下がる見込み。でも、出張中の食費や生活費、高速道路のETC代(自己負担分)がなくなるし、妻がフルタイムで働けるようになれば世帯収入はトントン。「お金より家族の時間を選ぼう」と二人で決めました。

Q: 転職先はどう選びましたか?

条件は「毎日家に帰れる」「土日休み」。地場の配送ドライバーか、全く別の業種か迷いましたが、ドライバーの仕事自体は好きだったので、地場配送を選びました。

大手飲料メーカーの物流子会社がルート配送ドライバーを募集していて、応募しました。4トン車で近県の小売店に配送する仕事です。朝7時出発、17時帰庫。完全週休二日。有給もちゃんと取れる。面接では「家庭の事情で毎日帰宅できる仕事を希望しています」と正直に伝えました。

Q: 前の会社への退職の伝え方は?

所長には1ヶ月半前に「家庭の事情で退職したい」と伝えました。所長は「吉田(同僚)も辞めて、山本まで辞められると困る」と引き止められましたが、「家族を守るための決断です」と丁重にお断りしました。

退職届は代表取締役社長宛に「一身上の都合」で提出。引き継ぎは後任ドライバーに担当ルートを2往復同乗してもらい、荷主ごとの注意事項(「この倉庫は左バックで入庫」「この荷受け担当者には必ず検品を一緒にやる」等)を細かく伝えました。

最終日には配車担当や同僚ドライバーに挨拶。長距離仲間から「寂しくなるな」と言われて、グッときました。

Q: 転職後の生活はどう変わりましたか?

毎日家に帰れる。この一言に尽きます。夕飯を家族と食べて、子どもの宿題を見て、一緒にお風呂に入って、寝かしつけをする。長距離時代にはできなかった「普通の生活」が手に入りました。

年収は80万円ダウンしましたが、妻がフルタイムのパートに切り替えたので世帯収入はほぼ維持。何より、妻の笑顔が戻りました。「パパが毎日いてくれるだけで、こんなに楽になるとは思わなかった」と言ってくれて。

長女の参観日に初めて行ったとき、「パパが来てくれた!」と飛びついてきた瞬間、転職して正解だったと確信しました。

Q: ワークライフバランスに悩むドライバーにアドバイスはありますか?

「稼がなきゃいけない」というプレッシャーと戦ってください。長距離ドライバーは確かに稼げますが、家族との時間、健康、精神的な余裕を犠牲にしています。年収が下がっても、家族と過ごす時間の価値はお金では測れません。

まず家族と話し合うこと。一人で決めず、パートナーと一緒に家計を見直して、「どこまで年収が下がっても生活できるか」を計算してください。意外と、長距離特有の出費がなくなることで、手取りの減少は想像より小さいことが多いです。

転職先は地場配送、ルート配送、送迎ドライバーなど「毎日帰れる」仕事がおすすめ。大型免許があれば選択肢は豊富です。

退職届は早めに出して、引き継ぎを丁寧に。ドライバー仲間との関係は大切にしてください。業界は意外と狭いです。