インタビュー対象者プロフィール
- 名前: 加藤 隆志さん(仮名)
- 年齢: 30歳
- 経験年数: ドライバー歴6年(大型長距離)
- 勤務先: 運送会社
- 資格: 大型免許
- 運行: 関東〜九州間の長距離輸送
- 症状: 慢性腰痛(椎間板変性症)、睡眠時無呼吸症候群
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Q: 体調の異変はいつから感じていましたか?
3年目くらいから腰に違和感がありました。長距離ドライバーは一日10時間以上座りっぱなしなので、腰への負担がすごいんです。最初は降車時に「イテテ」と思う程度でしたが、4年目に入ると荷物の積み下ろし中に腰が抜けるような感覚が出てきました。
整形外科で「椎間板変性症」と診断されました。加齢とともに進行するタイプで、長時間の座位や振動が悪化要因。つまり、大型トラックの運転はまさにワーストコンディションです。
Q: 睡眠の問題はどう発症しましたか?
長距離ドライバーの生活リズムは完全に不規則です。深夜に出発して朝方に到着、トラックの寝台で仮眠。夜中に起きてまた走る。体内時計がめちゃくちゃになります。
5年目に妻から「寝ている時に呼吸が止まっている」と言われて、検査を受けたら睡眠時無呼吸症候群と診断されました。CPAP(持続陽圧呼吸療法)を使うよう指示されましたが、トラックの寝台でCPAPを使うのは現実的に難しい。
日中の眠気がひどくなって、高速道路を走っている最中に意識が飛びそうになることが何度かありました。「これは本当にまずい」と。居眠り運転で事故を起こしたら、自分だけでなく他人の命も奪う。ドライバーとして致命的な状態でした。
Q: 会社には相談しましたか?
所長に腰痛と睡眠の問題を伝えました。「しばらく短距離に回してほしい」とお願いしたところ、短距離のルート配送に異動させてもらえました。でも、短距離でも一日8時間は運転するので、腰痛は改善しない。睡眠時無呼吸も、生活リズムは多少改善したものの根本的な治療が必要な状態でした。
3ヶ月短距離をやって、「ドライバーを続ける限り、この体の問題は解決しない」と確信しました。
Q: 退職を決断した決め手は何でしたか?
主治医から「このまま運転業務を続けると、腰の症状は悪化する一方。睡眠時無呼吸も、不規則な勤務を続ける限り改善しない。職業を変えることを強くすすめる」と言われたことです。
正直、ドライバーの仕事は好きでした。一人で走る自由さ、荷物を届ける達成感。でも、体がついてこない。しかも、居眠り運転で事故を起こしたら人殺しになる。その恐怖が最終的に退職を決意させました。
Q: 退職届はどう提出しましたか?
所長に診断書を見せながら退職の意思を伝えました。「体調不良で運転業務の継続が困難です」と。所長は「残念だけど、体が一番大事だから」と理解してくれました。
退職届には「体調不良により業務の継続が困難となりましたので」と記載。退職日は1ヶ月後に設定。引き継ぎは担当ルートの後任ドライバーに同乗してもらい、1往復かけて行いました。
離職票には「体調不良による退職」と記載してもらいました。失業保険の待機期間なしで受給できるので、退職後の生活の不安が少し和らぎました。
Q: 退職後の回復と再就職はどうでしたか?
退職して最初にやったのは、睡眠時無呼吸の本格的な治療です。CPAPを毎晩使って、規則正しい生活を送ったら、3ヶ月で日中の眠気はほぼなくなりました。腰痛もリハビリと筋トレで半年後にはかなり改善。
再就職は、倉庫の在庫管理の仕事に就きました。フォークリフトの資格は持っていなかったので取得して、物流センターで勤務。運転する時間はフォークリフトだけなので腰への負担は大幅に減りました。年収は100万円ほど下がりましたが、健康と安全には代えられません。
Q: 体調不良で悩んでいるドライバーにアドバイスはありますか?
居眠り運転の兆候がある方は、今すぐ医療機関を受診してください。これは冗談ではなく、命に関わる問題です。睡眠時無呼吸症候群はドライバーに非常に多い疾患で、検査も治療も保険適用されます。
腰痛を「ドライバーの職業病」と諦めないでください。早期に対処すれば悪化を防げます。座席のクッション、姿勢の改善、適度なストレッチだけでも違います。
退職届を出すときは、診断書を必ず取得してください。「体調不良による退職」として扱ってもらえれば、失業保険で有利になります。
ドライバーの経験は物流業界で幅広く活かせます。倉庫管理、配車、物流企画、フォークリフトオペレーター。「ハンドルを握る以外の物流の仕事」は想像以上にたくさんあります。