インタビュー対象者プロフィール
- 名前: 田村 孝之さん(仮名)
- 年齢: 33歳
- 経験年数: ドライバー歴9年(中型→大型)
- 勤務先: 運送会社
- 資格: 大型免許、フォークリフト運転技能
- 業務: 雑貨・日用品の中距離輸送
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Q: 将来に不安を感じた理由は何ですか?
最大のきっかけは2024年問題です。2024年4月から、トラックドライバーにも時間外労働の上限規制(年960時間)が適用されました。うちの会社でも残業時間を減らすために運行回数を削減。結果、月の手取りが3万円近く減りました。
「走ってナンボ」の世界で走る時間が減れば、当然収入も減る。しかも、荷主からの運賃値上げ交渉はなかなか進まない。会社の利益も減って、基本給の引き上げも期待できない。「このまま5年、10年と働いて、年収はどうなるのか」と考えると暗くなりました。
Q: 業界全体の将来をどう見ていましたか?
ドライバーの平均年齢は約49歳。10年後には60歳近くになる計算で、大量離職が起きます。若い人は入ってこない。人手不足はますます深刻化する。
一方で、自動運転技術の発展も気になっていました。レベル4の自動運転トラックが高速道路で実用化されれば、幹線輸送のドライバーは不要になるかもしれない。5年後か10年後かは分からないけど、いつかは来る。そのとき、40代で「運転しかできない」状態では詰む。
Q: 同業他社への転職は考えませんでしたか?
考えましたが、結局どの運送会社も同じ構造的問題を抱えています。大手なら多少待遇は良いけど、2024年問題の影響は大手でも同じ。運賃交渉力のある大手は少しマシかもしれませんが、ドライバーとして走る限り、収入の天井は見えている。
「運送業界の中で転職しても、根本的な解決にならない」と思って、異業種転職を決意しました。33歳、ギリギリのタイミングだと思いました。
Q: 異業種への転職に不安はありませんでしたか?
不安だらけでした。高卒で、ドライバー以外の仕事をしたことがない。パソコンもほとんど使えない。「自分に何ができるのか」が全く分からなかった。
転職エージェントに登録して相談したら、「ドライバー経験者は物流企画、倉庫管理、配送管理など物流の周辺業務で需要がある」「体力があって、時間管理ができて、一人で仕事を完結できる人材は貴重」と言ってもらえました。
実際に求人を見てみると、「物流経験者歓迎」「ドライバー経験者優遇」という求人が意外と多い。自分が思っていたほど、選択肢は狭くなかったです。
Q: 転職活動はどう進めましたか?
転職エージェント1社と転職サイト1つを使いました。応募したのは4社。物流会社の倉庫管理2社、インフラ設備の点検会社1社、食品工場の製造管理1社。
面接で意識したのは、「ドライバーとしての経験を一般的なビジネススキルに翻訳する」こと。「10トン車で毎日安全に配送した」→「厳格な安全管理とタイムマネジメント」。「荷主と配送スケジュールを調整した」→「顧客折衝とスケジュール管理」。エージェントのアドバイスで、こういう言い換えを準備しました。
最終的に、大手物流会社の倉庫管理職として内定。年収は420万円で、ドライバー時代の450万円から30万円ダウンしましたが、残業はほぼゼロで土日休み。時給換算では明らかにアップです。
Q: 退職時のことを教えてください。
所長に「異業種に転職したい」と伝えました。予想通り引き止められましたが、「業界の将来性に不安がある」とは言えず、「新しいことに挑戦したい」と伝えました。
退職届は代表取締役社長宛に「一身上の都合」で提出。1ヶ月の引き継ぎ期間を設けて、担当ルートを後任に引き継ぎました。同僚のドライバーたちには個別に挨拶。「田村さんがいなくなると寂しい」と言ってくれた後輩の言葉が嬉しかったです。
最後の運行を終えたとき、トラックから降りて「これが最後か」と思いました。9年間、このハンドルを握ってきた。感慨深かったですが、後悔はありませんでした。
Q: 転職後の変化を教えてください。
倉庫管理の仕事は、物流の知識がそのまま活きます。「この荷物はこう積んだら効率がいい」「この配送ルートだとこの順番で出荷すべき」など、ドライバー目線の改善提案が評価されています。
生活面では、毎日同じ時間に出勤して、同じ時間に帰れる。休日は確実に休める。体への負担も大幅に減って、腰痛も改善しました。年収は30万円ダウンしましたが、生活の質は比較にならないほど向上しました。
Q: 業界の将来に不安を感じているドライバーにアドバイスはありますか?
その不安は正しいです。2024年問題は始まりに過ぎません。今後、運賃交渉が進まなければ中小運送会社の淘汰が加速し、大手への集約が進みます。自動運転の実用化も現実味を帯びてきています。
「ドライバーしかできない」と思い込まないでください。物流業界はドライバー以外にも多くの職種があります。倉庫管理、配車、物流企画、品質管理。あなたの現場経験は、どの職種でも武器になります。
転職するなら35歳がボーダーライン。異業種への未経験転職は、年齢が上がるほど難しくなります。迷っているなら、まず転職エージェントに相談するだけでもしてください。自分の市場価値を知ることが、第一歩です。
退職届を出すときは引き継ぎを丁寧に。特にルートの引き継ぎは同乗が必須です。最後まで責任を果たすことが、次のキャリアでの信頼にもつながります。