ドライバーが退職する際、後任への引き継ぎは円満退社の要です。配送ルートの細かな注意点や車両のクセなど、口頭では伝えきれない情報を整理して引き継ぎましょう。
引き継ぎが重要な理由
ドライバーの仕事は属人化しやすい
担当ルートの道順、荷主との暗黙のルール、車両の微妙なクセなど、ドライバーの仕事には個人の経験に依存する情報が多くあります。これらを引き継がないと、後任ドライバーがトラブルを起こしたり、荷主との関係が悪化する恐れがあります。
引き継ぎの質が退職後の評判を左右する
運送業界は横のつながりが強い業界です。丁寧な引き継ぎを行うことで、退職後も良い評判が残り、将来の再就職や業界内での信用につながります。
引き継ぎ項目一覧
1. 配送ルートの情報
- ルートの道順: 効率的な回り方、時間帯による渋滞回避ルート
- 道路事情: 狭い道、高さ制限のある高架、重量制限のある橋
- 時間帯規制: 大型車通行禁止の時間帯・区間
- 駐車スペース: 各納品先での荷降ろし時の駐車場所
- 所要時間の目安: 各区間の通常時・渋滞時の所要時間
2. 荷主・納品先の情報
- 担当者名と連絡先: 各取引先のキーパーソン
- 納品時の注意点: 時間指定の厳しさ、検品の方法
- 荷降ろしの手順: 手積み手降ろしか、フォークリフトか、パレット納品か
- 伝票処理: 受領印のもらい方、伝票の枚数
- 暗黙のルール: 「○○商店は裏口から入る」「△△倉庫は必ず電話してから行く」など
3. 車両の情報
- 車両のクセ: ハンドルの遊び、ブレーキの効き具合、クラッチの重さ
- 既知の不具合: 軽微な異音、エアコンの効き具合、パワーゲートの操作のコツ
- 整備履歴: 直近の車検・点検内容、タイヤ交換時期
- 燃費の目安: 通常の燃費と給油のタイミング
- 車載機器の使い方: デジタコ、ドラレコ、ETC、ナビの操作方法
4. 日常業務の手順
- 朝の出庫前点検: 日常点検のポイント
- 運転日報の書き方: 記入ルール、提出先
- アルコールチェックの手順: 使用する検知器の場所と操作方法
- 帰庫後の作業: 洗車の頻度、燃料補給のルール
引き継ぎの方法
引き継ぎ書の作成
口頭だけでなく、書面(メモやノート)で引き継ぎ書を作成すると後任ドライバーが安心です。以下の構成で作成しましょう。
- 担当ルート概要
- 各納品先の情報(名称・住所・担当者・注意点)
- 車両情報
- 日常業務の流れ
- トラブル時の対応先一覧
同乗研修
可能であれば、後任ドライバーと1〜3日間の同乗研修を行うのが理想です。実際のルートを一緒に回りながら、書面では伝えきれないノウハウを直接教えることができます。
配車担当への共有
引き継ぎ書のコピーを配車担当にも渡しておくと、後任ドライバーが困ったときのフォロー体制が整います。
引き継ぎ期間の目安
- ルート配送: 1〜2週間(ルートが複数ある場合はその分長く)
- 長距離運行: 2〜3回の同行運行が望ましい
- 専属便(特定荷主): 荷主との顔合わせを含めて1〜2週間
退職日から逆算して、有給消化期間も考慮した引き継ぎスケジュールを立てましょう。
引き継ぎを拒否された場合
まれに「引き継ぎなんかしなくていい、すぐ辞めろ」と言われるケースもあります。その場合でも退職届の提出から2週間(民法第627条)で退職は成立します。引き継ぎは義務ではなく、後任への配慮として行うものです。