インタビュー対象者プロフィール

  • 名前: 木村 さくらさん(仮名)
  • 年齢: 28歳
  • 経験年数: 歯科衛生士歴6年
  • 勤務先: 審美歯科クリニック
  • 役職: チーフ衛生士

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Q: どのような問題がありましたか?

院長がとにかくワンマンで、気分屋でした。機嫌が悪いと診療中に怒鳴る、器具の渡し方が気に入らないと手をはたく、患者さんの前で「こんなこともできないのか」と言う。審美歯科なのでセラミックの色合わせなど繊細な作業が多いんですが、院長の指示がコロコロ変わるんです。前回OKだったものが今回はダメ、理由も教えてくれない。

チーフだった私は特に当たりが強くて、他のスタッフのミスも全部私の責任にされました。「お前がちゃんと教育しないから」と。もう一人の衛生士さんは入って2年目で、彼女がミスするのは当然なのに。

Q: スタッフ間の関係はどうでしたか?

衛生士同士は仲が良かったです。むしろ「院長がひどい」という共通の悩みで結束していました(苦笑)。でも、助手さんの中には院長に取り入る人もいて、情報が筒抜けになっていることもありました。

院長の奥さんが受付をしていたので、経営と家庭が混在している典型的なパターンでした。奥さんに相談しても「あの人はああいう性格だから」で終わり。改善の見込みはゼロでした。

Q: 我慢の限界を感じたのはいつですか?

決定的だったのは、残業代の未払い問題です。診療時間は9時〜19時でしたが、実際には片付けや準備で8時半〜20時まで拘束されていました。残業代は一切出ない。これを院長に伝えたら「嫌なら辞めれば?代わりはいくらでもいる」と言われたんです。

その晩、帰宅して着替えもせずに泣きました。6年間頑張ってきたのに「代わりはいくらでもいる」と言われるのかと。翌日から転職サイトに登録しました。

Q: 退職代行の利用は考えましたか?

正直、考えました。院長に直接言うのが怖かったので。でも、歯科衛生士業界は狭いので、退職代行を使ったことが噂になると今後に影響するかもしれないと思い、自分で伝えることにしました。

ただし、一人で伝えるのは不安だったので、事前に労働基準監督署に相談して、残業代未払いの件も含めてアドバイスをもらいました。「退職届を提出すれば、法的には2週間で退職できる」と言われたことが心強かったです。

Q: 実際にどう退職を伝えましたか?

転職先の内定が出てから、診療後に院長に伝えました。「退職します」とだけ簡潔に。理由を聞かれましたが、「一身上の都合です」と繰り返しました。パワハラのことは言いませんでした。感情的になると話がこじれると思ったからです。

院長は「そんな急に言われても困る」と言いましたが、退職届を受け取ってもらい、1ヶ月後の退職で合意しました。残業代の件は、退職後に労働基準監督署を通じて請求し、最終的に一部支払ってもらいました。

Q: 退職届の書き方で注意した点は?

退職届は「退職願」ではなく「退職届」にしました。退職願だと院長が「受理しない」と言い出す可能性があったので。宛名は医療法人の場合は理事長ですが、うちは個人経営だったので院長名で提出しました。

日付は退職日の1ヶ月前の日付で、理由は「一身上の都合」。シンプルに、事務的に。感情は一切入れず、証拠として手元にコピーも残しました。

Q: 転職後はどうなりましたか?

予防歯科に力を入れている別のクリニックに転職しました。新しい院長は穏やかな方で、スタッフへの指示も明確。何より「ありがとう」「助かったよ」と言ってくれるんです。当たり前のことですが、前の職場ではなかったこと。

給与も月3万円アップして、残業代もきちんと支払われています。有給も取れる。「普通の職場」がこんなに幸せだなんて。

Q: 同じ悩みを持つ歯科衛生士にアドバイスはありますか?

歯科衛生士は慢性的な人手不足なので、「代わりはいくらでもいる」は嘘です。むしろ、あなたの代わりはなかなかいません。転職先はいくらでもあります。

パワハラを受けているなら、記録を残してください。日時、内容、できれば録音も。そして労働基準監督署や歯科衛生士会の相談窓口に連絡を。一人で抱え込まないでください。

退職届は「退職届」として提出すれば、院長が何と言おうと法的には退職できます。あなたの健康と幸せが最優先です。