インタビュー対象者プロフィール

  • 名前: 渡辺 かなえさん(仮名)
  • 年齢: 29歳
  • 経験年数: 歯科衛生士歴7年
  • 勤務先: 歯科医院
  • 症状: 右手の腱鞘炎、頸椎ヘルニア

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Q: 体調の異変を感じたのはいつですか?

4年目くらいから右手の親指の付け根が痛むようになりました。スケーラーを握る手なので、最初は「使い過ぎかな」くらいに思っていたんです。でも徐々にペンを握るのも痛くなって、朝起きると手がこわばって動かせない日が出てきました。

整形外科で「腱鞘炎」と診断されて、サポーターとステロイド注射で対応していました。でも、仕事を続けている限り良くならない。注射を打つ間隔がどんどん短くなっていきました。

6年目に入った頃、今度は首と肩に強い痛みが出て。MRIを撮ったら頸椎ヘルニアと診断されました。歯科衛生士の姿勢って、ずっと前かがみで首を曲げているので、首への負担が大きいんですよね。利き手の指先にしびれが出てきて、「このままでは手が使えなくなる」と恐怖を感じました。

Q: 仕事への影響はどの程度でしたか?

一番困ったのはSRP(歯石の除去)です。繊細な手の感覚が必要な処置なのに、指がしびれていてスケーラーの先端の感触が分からない。深いポケット内の歯石を確実に取れているのか不安でした。

首の痛みで長時間同じ姿勢を保てなくなって、30分の処置の途中で一度体を起こさないといけない。患者さんには「少し休憩しますね」と言っていましたが、実は限界だったんです。

Q: 休職は選択肢にありましたか?

院長に相談したところ、「1ヶ月くらい休んでもいいよ」と言ってくれました。実際に2週間の休養を取りました。痛みは少し和らぎましたが、復帰して3日で元に戻りました。

主治医からは「手術という選択肢もあるが、仕事を続ける限り再発リスクは高い。職業を変えることも検討してほしい」と言われました。手術してまで続けるべきか、長期休職して他のスタッフに迷惑をかけるのか。考え抜いた結果、退職を選びました。

Q: 退職の決断に迷いはありませんでしたか?

正直、ものすごく迷いました。歯科衛生士になるために専門学校に3年通って、国家試験も頑張って受かって。7年間のキャリアを手放すのは、自分の人生を否定されるような気持ちでした。

でも、体を壊したら何もできなくなる。手のしびれが悪化したら、日常生活にも支障が出る。「健康な体があってこそ働ける」という当たり前のことに、ようやく気づきました。

Q: 退職届はどう提出しましたか?

院長には主治医の診断書と一緒に退職の意思を伝えました。「体調不良により業務の継続が困難」という理由です。院長は理解してくれて、「かなえさんの体が一番大事だから。無理しなくていい」と。

退職届には「体調不良により業務の継続が困難となりましたので」と記載しました。退職日は1ヶ月半後に設定し、その間は軽い業務(受付補助やカルテ整理)に変更してもらいました。引き継ぎは担当していた定期管理の患者さんのリストと注意事項をまとめて後任に渡しました。

Q: 退職後の回復状況は?

退職して半年、リハビリに通いながら回復しました。腱鞘炎はほぼ完治。頸椎ヘルニアも、姿勢改善とストレッチを続けて、しびれはほとんどなくなりました。ただ、長時間の前かがみ姿勢はまだ避けています。

現在は歯科材料メーカーの営業職に転職しました。歯科の知識があるので、ドクターや衛生士さんへの製品説明がスムーズにできます。デスクワークと外回りのバランスで、体への負担も少ない。年収も衛生士時代より上がりました。

Q: 体調不良で悩んでいる歯科衛生士にアドバイスはありますか?

「我慢するのが美徳」と思わないでください。腱鞘炎も頸椎ヘルニアも、歯科衛生士の職業病です。早期発見・早期対応が大事。痛みを感じたらすぐに整形外科を受診して、診断書をもらってください。

休職制度がある医院なら、まず休職して様子を見るのもいいと思います。でも、復帰後も同じ業務を続ける限り再発する可能性が高いことは覚悟しておいたほうがいい。

歯科衛生士の資格と知識は、臨床以外でも活かせます。歯科材料メーカー、医療機器メーカー、歯科衛生士学校の教員、歯科保健行政など。「歯科衛生士=クリニック勤務」だけではありません。自分の体を大切にしながら、新しいキャリアを見つけてください。