インタビュー対象者プロフィール
- 名前: 松本 里奈さん(仮名)
- 年齢: 31歳
- 経験年数: 歯科衛生士歴9年
- 勤務先: 一般歯科クリニック
- 役職: チーフ歯科衛生士
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Q: 待遇面でどのような不満がありましたか?
9年目のチーフ衛生士なのに、手取りは23万円。賞与は年2回でそれぞれ1ヶ月分程度。年収にすると約350万円です。新卒で入った同級生たちは、一般企業で年収450万、500万と上がっていくのに、自分は9年間で月給が4万円しか上がっていない。
チーフとして後輩の指導もしていたし、予防プログラムの改善や患者管理の効率化も自分で提案して実行していました。でも、それが給与に反映されることはありませんでした。院長に昇給の交渉をしたこともありましたが、「うちの経営状況では難しい」の一点張り。
Q: 歯科衛生士の給与構造にどう感じていましたか?
歯科衛生士の平均年収は約380万円と言われていますが、これは都市部の大きな医院を含めた数字です。地方や小規模クリニックだと300万円台前半がザラ。しかも、昇給カーブがほとんど平坦で、10年目も20年目も大きく変わらない。
「資格を持っているのにこの待遇?」というのが率直な気持ちでした。国家資格を取るのに3年間学校に通って、臨床実習もこなして、国家試験も合格して。それなのに一般事務と同等かそれ以下の給与って、おかしくないですか。
Q: 転職を決意したきっかけは何でしたか?
転職サイトで自分のスキル・経験で応募できる求人を見たとき、月給28万〜32万円という歯科クリニックがいくつもあったんです。自由診療(矯正やインプラント)を多く扱うクリニックは衛生士の貢献が直接売上に結びつくので、待遇が良い傾向にあります。
「同じ仕事をしていても、場所が違うだけでこんなに差があるのか」と驚きました。今のクリニックに義理はあるけど、自分の人生を犠牲にする義理はないと思いました。
Q: 転職活動はどう進めましたか?
歯科衛生士専門の転職サイト2つと、一般の転職エージェント1つに登録しました。歯科専門のサイトは求人の質がいいですが、一般のエージェントは給与交渉のアドバイスが的確でした。
重視した条件は「月給28万円以上」「社会保険完備」「週休2日」「有給取得実績あり」。3つのクリニックの面接を受けて、最終的に矯正歯科専門のクリニックに決めました。月給30万円、賞与年2回(計3ヶ月分)、年収ベースで約470万円。前職から120万円のアップです。
面接では、「SRP単独で処置できる」「ホワイトニングのコーディネーション経験がある」「予防プログラムの立案・運用実績がある」と具体的にアピールしました。
Q: 退職時の院長の反応は?
院長には退職日の2ヶ月前に伝えました。「もっと給与を上げるから残ってくれ」と引き止められましたが、今更感が否めませんでした。9年間何度も交渉しても上げてくれなかったのに、辞めると言った途端に上げるというのは、結局私のことを評価していたわけではなく、人手が足りなくなるのが困るだけだろうと。
丁重にお断りして、退職届を提出しました。理由は「一身上の都合」。引き継ぎは1ヶ月半かけて、担当患者のリスト、予防プログラムのマニュアル、後輩への引き継ぎノートを作成しました。
Q: 転職後の変化を教えてください。
年収120万円アップは本当に大きい。生活に余裕ができて、将来のための貯蓄もできるようになりました。矯正歯科なので新しい技術も学べて、やりがいも倍増。何より、自分の仕事が正当に評価されていると感じられるのが嬉しいです。
職場の雰囲気も良くて、院長は「衛生士がいないとクリニックは回らない」という考えの方。定期的な面談で業務の相談ができるし、スキルアップのための外部研修も費用を出してくれます。
Q: 待遇に不満がある歯科衛生士にアドバイスはありますか?
歯科衛生士は慢性的に不足しています。つまり、あなたには交渉力があるんです。まずは転職サイトに登録して、自分の市場価値を確認してください。月給20万円台前半で我慢する必要はありません。
転職先を選ぶときは、給与の数字だけでなく、社会保険・退職金制度・有給取得実績・残業の実態も必ず確認しましょう。面接時に「前任者の退職理由」を聞くのも効果的です。
退職届を出す前に必ず転職先を決めてから動きましょう。そして、退職時は引き継ぎを完璧にすること。歯科業界は本当に狭いので、悪い評判が立つと次の転職にも影響します。感謝の気持ちを持って、プロとして最後まで丁寧に。