# 【座談会】公務員を辞めて1年後の生活はどう変わった?4人が正直に語る
座談会参加者
- Aさん(35歳・元県庁 12年 → シンクタンク)
- Bさん(38歳・元市役所 10年 → NPO)
- Cさん(42歳・元市役所 15年 → フリーランス)
- Dさん(31歳・元市役所 6年 → 起業)
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退職から1年経って、一番変わったことは
司会: 辞めてから1年。人生で一番変わったのはどこですか?
A: 朝起きるのが楽になりました。公務員の時は、出勤前に気持ち悪くなることが多かった。今は、普通に起きられます。心と体の状態が、本当に改善された。給料は10%下がりましたが、医療費が減りました。精神科通院がなくなった。差し引きするとプラスです。
B: 時間の質が変わった。NPOは定時で帰れるわけではないんですが、その業務が「社会への貢献」と直結しているので、同じ時間でも充足感が違います。市役所の時は、月末の統計処理に20時間かけても「誰に役立つのか分からない」という感覚。今は「この事業が地域の課題を解決している」という実感があります。
C: 自分の専門性が評価される喜びです。フリーランスになって、単価で評価されます。同じ1時間の仕事でも、市役所なら「時給2000円相当」の給与。フリーランスなら「時給10000円」で受注できる案件もあります。自分の価値が市場で正当に評価される経験って、公務員の時にはなかった。
D: 「失敗を許容する心理」が芽生えました。起業は失敗のリスクがあります。でも、市役所の時よりも、失敗に向き合える心の強さができた。公務員の時は「失敗=致命傷」という恐怖心がありました。でも、退職を決行した時点で「最悪のシナリオ(失職)は既に経験した」という悟りが生まれたんです。
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収入の現実
司会: 給料はどう変わりましたか?
A: 月給は48万円→52万円。実は上がりました。公務員は「年功序列で定期昇給」というシステムですが、民間は「成果による変動」です。私の場合、初年度は様子見の配置でしたが、専門性を評価されて配置が変わり、給料も上がった。ただし、ボーナスが不安定。夏と冬に「ボーナス0に近い」という月もありえます。
B: 月給は42万円→35万円。正直、つらいです。公務員の時は年収520万円。NPOは年収420万円。その差100万円は大きい。でも、奨学金の返済が月3万円あるので、実質的な生活費は変わっていません。それに、公務員時代の貯金が150万円あるので、1年は何とかなります。今後が不安です。
C: 年収は当初300万円でしたが、今は600万円。公務員時代の480万円から大幅アップ。ただし、税金と社会保険で手取りは公務員時代より少ない。経費も自分で負担するので。実質手取りでは、給料の額面より複雑です。
D: 起業1年目は赤字。給料ゼロ。公務員時代の貯金400万円を切り崩して生活。妻が公務員で、その給料と我が家を支えています。起業2年目に黒字化の見込み。その時に月給30万円程度の予想。公務員時代(月40万円)からは下がる見込みです。
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人間関係の変化
A: シンクタンクは、公務員より「能力主義」です。優秀な人には仕事がたくさん来るし、昇進も早い。でも、その分、競争もある。公務員の「誰もが平等」という文化からは、大きく異なります。ただ、その競争の中で、自分の能力が試される。その過程での人間関係は、市役所より「本物」に感じます。
B: NPOは職員数が少ないので、人間関係が近い。深い。その分、衝突もあります。でも、公務員のような「表面的な関係」より、「本当の信頼」が作られているように感じます。給料は低いですが、「チームとしての一体感」がある。
C: フリーランスは、人間関係がドライ。仕事を通じた「契約関係」です。その代わり、人間関係のストレスはほぼゼロ。市役所の時は「あの課長の評判が悪い」とか「あの係長とのソリが合わない」とか、人間関係の悩みが毎日ありました。今はそれがない。
D: 起業は、経営者としての人間関係に変わりました。部下がいる(アルバイト2人)。その責任がある。給料が払えない、という恐怖と隣り合わせです。公務員の時は「部下の給料は組織が払う」という安心感がありました。今はそれがない。その緊張感は、良い刺激にもなり、悪い刺激にもなります。
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生活の質的な変化
司会: お金以外の部分では、生活は豊かになりましたか?
A: 残業が減りました。シンクタンクは案件主義で、案件が終わったら「仕事は終わり」です。公務員は「定時後も報告書作成」という無限の業務があった。今は週3日、20時以降に仕事をすることはありません。その時間が自分の時間に変わった。読書、映画、友人との時間。生活の質は間違いなく上がりました。
B: ボランティア活動に参加し始めました。NPOでの仕事が「社会貢献」だと気づいたら、プライベートでも同じような活動をしたくなりました。公務員の時は、仕事が「義務」だったので、プライベートは「休息」でした。今は仕事とプライベートが「同じ方向」を向いている。その統一感が、人生に満足感をもたらしています。
C: 子どもと一緒の時間が増えました。在宅フリーランスなので、子どもが学校から帰宅した時間に、親としての対応ができます。公務員の時は「早お迎え」があると、同僚の目が気になりました。今はそれがない。育児の質が上がったと妻も言っています。
D: 「自分の時間がない」というのが正直なところです。起業1年目は、経営と営業に全振り。朝6時起床、夜23時就寝。オフがない。公務員の時は「週末は休める」という安心感がありました。今は、「いつ休むのか」を自分で決めなければならない。その判断の連続で、心が疲れています。
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後悔と満足度
司会: 今、退職を後悔していますか?
A: 後悔ゼロです。給料が上がり、人間関係が良く、仕事の充実感がある。これ以上何が必要でしょう。強いて言えば、「もっと早く決断すれば、35歳ではなく30歳で転職できたのに」という思いはあります。
B: 後悔は5%程度です。給料が下がったことだけです。でも、その5%の後悔も「贅沢な後悔」だと気づきました。社会に貢献しながら、生活できているんですから。ただ、40代に差しかかると、「年金」のことが気になります。公務員の退職金、年金制度の手厚さを失ったことの重さが、今後見えてくるんだと思います。
C: 後悔ゼロ。むしろ「なぜ市役所にいたのか」と疑問さえあります。フリーランスで年収600万円なら、市役所での480万円は何だったのか。もちろん、市役所での経験があってこそのフリーランスですから、全否定ではありません。でも、「公務員の時間」を後悔していません。
D: 後悔50%。起業は、精神的には満足しています。「自分の人生に責任を持つ」という感覚があります。でも、経営の苦しさは想像以上。給料ゼロ、成功の見込みが不透明。妻の給料に依存する状態。男性としてのプライドも、経済的には傷つきます。「3年後に黒字化できなかったら、公務員に戻りたい」という願いを持っています。
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これからの人生設計
司会: 3年後、5年後はどんな状態を目指していますか?
A: 今のシンクタンク企業での昇進を狙っています。課長職には3年内に昇進できる見込み。その後は、コンサル系の他企業への転職も視野に。40代での転職は難しいので、35〜40歳のうちに「シニアコンサルタント」の地位を確立したい。
B: NPOでのキャリア形成。現在は職員ですが、3年内に事業部長を目指しています。それ以降は、NPO組織の経営に携わりたい。給料は上がらないかもしれませんが、「社会への影響力」を高めたいです。
C: フリーランスの継続。クライアントを10社程度に絞って、長期契約を目指します。今は案件主義で、毎回営業してますが、安定した長期クライアントで「月収50万円程度」を固定化したい。その後は、専門分野での執筆活動や、後進育成に興味があります。
D: 起業の黒字化。それが最優先です。成功しなければ、給料が補償されない。同時に、起業を通じた「学び」を次のステップに活かしたい。もし失敗しても、その経験は人生の資産になると信じています。
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後に続く公務員へのメッセージ
A: 退職を恐れないでください。35歳なら、民間企業では十分な市場価値があります。「公務員は潰しが利かない」というのは嘘。逆に、公務員での実務経験は民間で非常に高く評価されます。
B: 給料よりも、「何に時間を使うか」を優先してください。仕事は人生の大部分を占めます。その仕事が「社会への貢献」と感じられないなら、転職の価値は十分あります。
C: 「市場価値」を意識してください。公務員の中にいると、「自分の専門性がどの程度の価値か」が見えません。フリーランスになって初めて「クライアントがいくら払ってくれるか」で価値が測られます。その客観的な評価は、心強いです。
D: 起業は、絶対的にお勧めはしません。リスクが高い。でも、「公務員の安定に依存する人生」に満足できない人なら、起業の道もある。3年の覚悟があれば、道は開けます。
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最後に
4人とも、「人生に満足している」という点では一致しています。給料の増減はありますが、「人生全体での幸福度」は、公務員時代より高い。
公務員という選択は「安定」をもたらします。しかし、その「安定」は、時に「停滞」と同義語になることがあります。
人生は一度きり。自分の時間、自分の選択を大事にしてください。