# 異動先のパワハラ上司に限界|市役所職員7年目の退職決断
インタビュー対象者プロフィール
- 名前: 松本 彩さん(仮名)
- 年齢: 31歳
- 経験年数: 市役所 行政職 7年
- 勤務先: 市役所
- 退職後: 社会保険労務士事務所に転職
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Q: パワハラを受けるようになったきっかけを教えてください。
5年目の4月に異動した先の課長が問題でした。福祉課から税務課への異動で、全く畑違いの業務に戸惑っている私に対して、課長は最初から厳しかったです。
「こんなことも分からないのか」「前の課では何をしていたんだ」と毎日のように叱責されました。税務の専門知識は未経験なので当然分からないことが多いのですが、質問すると「自分で調べろ」、調べて報告すると「そんなことを聞いているんじゃない」。何をしても否定されるループでした。
公務員の異動は3〜5年ごとにありますが、課長クラスの異動はもっと遅い。つまり、私が次に異動するまでの2〜3年間、この課長の下で働き続ける可能性が高かったんです。
Q: 公務員組織の中で、相談先はありましたか?
人事課に相談しました。公務員の場合、パワハラ相談窓口は人事課が担当していることが多いです。ただ、相談した結果は期待外れでした。「課長にも事情があるのでは」「もう少し様子を見てください」という対応でした。
問題は、公務員組織の人事がいかに硬直的かということです。「パワハラがあったから異動させてほしい」と言っても、定期異動の時期(4月)まで対応できないと言われます。つまり、あと1年間は耐えろということです。
職員組合にも相談しましたが、「組合から管理職に是正を求めることは難しい」とのこと。公務員の組合は民間の労働組合と違って、団体交渉権が制限されています。
最終的に、外部の弁護士に相談しました。弁護士からは「パワハラの証拠を集めて、公平委員会に措置要求を出す方法がある」とアドバイスされましたが、手続きに半年以上かかる上に、結果が出る保証もないと聞いて、退職のほうが現実的だと判断しました。
Q: 退職を決断した瞬間を教えてください。
ある月曜日の朝、出勤しようとして玄関で足が動かなくなりました。体が拒否反応を起こしたんです。その日は休みをもらいましたが、火曜日も同じ状態でした。心療内科を受診して「適応障害」と診断されました。
2週間の病気休暇を取り、その間に冷静に考えました。公務員の安定した身分を捨てることへの恐怖はありましたが、「このまま壊れるくらいなら辞めたほうがいい」という結論に至りました。
Q: 辞職の手続きはどう進めましたか?
病気休暇明けに人事課に直接出向き、辞職の意思を伝えました。課長には直接伝えたくなかったので、人事課を通じて伝えてもらいました。
辞職願は市長(任命権者)宛てで提出しました。公務員の辞職願は、民間の退職届とは書式が異なります。「辞職を承認されたく、お願いいたします」という文言を使います。
辞職の時期は、有給休暇の残日数を考慮して設定しました。病気休暇後に出勤して引き継ぎを行い、その後は残りの有給休暇を消化して退職日を迎える形にしました。公務員の有給休暇は年間20日あり、繰越分を含めると40日近くあったので、実質的には1ヶ月半ほど前に最終出勤日を迎えました。
Q: 退職金や年金の扱いはどうなりましたか?
退職手当は勤続7年で約120万円でした。公務員の退職手当は勤続年数が長いほど有利な計算式なので、7年では少なめです。ただ、自己都合退職と定年退職では支給率が異なるため、事前に人事課で概算を確認しておくことをお勧めします。
年金は共済年金(現在は厚生年金に統合)から国民年金への切り替え手続きが必要です。共済組合の資格喪失届は退職日の翌日から14日以内に手続きします。転職先が決まっている場合は、転職先の厚生年金に加入するので、空白期間が生じないよう入社日を調整しました。
健康保険は、共済組合の任意継続(最大2年)か国民健康保険を選択します。任意継続の保険料は在職中の約2倍になりますが、国民健康保険より安い場合もあるので比較検討してください。
Q: 転職後の変化と、同じ状況の公務員へのメッセージをお願いします。
社会保険労務士事務所に転職して、企業の人事労務コンサルティングを担当しています。公務員時代の法律知識(特に労働法規や社会保険制度)がそのまま活きる仕事です。年収は公務員時代と同等ですが、専門性が評価される環境にやりがいを感じています。
パワハラに悩んでいる公務員の方に伝えたいのは、「公務員の安定は、あなたの心身の健康を犠牲にしてまで守る価値はない」ということです。
公務員特有の問題として、パワハラの相談先が機能しにくい構造があります。人事課は管理職の味方になりやすく、組合の力も限定的。だからこそ、外部の相談窓口(弁護士、労働局の総合労働相談コーナーなど)を積極的に活用してください。
辞職願の書き方に迷ったら、このサイトのテンプレートを利用してください。公務員向けの書式(宛先が任命権者、「辞職」の用語)に対応しています。
証拠の記録は必ず残してください。日時、場所、発言内容、目撃者をメモに残す習慣をつけることが重要です。退職後に公平委員会への措置要求や損害賠償請求を検討する場合、これらの記録が唯一の武器になります。