# 介護離職を選んだ地方公務員|市役所職員9年目の決断

インタビュー対象者プロフィール

  • 名前: 小林 洋平さん(仮名)
  • 年齢: 33歳
  • 経験年数: 市役所 行政職 9年
  • 勤務先: 市役所
  • 家族構成: 独身、母親(68歳・要介護3)
  • 現在: 在宅介護をしながらフリーランスで行政書士業務

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Q: 介護が必要になった経緯を教えてください。

母が65歳の時に脳梗塞で倒れました。命は取り留めましたが、右半身に麻痺が残り、日常生活に介助が必要な状態になりました。要介護認定は要介護3。食事、入浴、トイレに介助が必要です。

父は既に他界しており、兄弟もいない一人っ子なので、介護の責任は全て私にかかってきました。

Q: 最初はどのように両立していましたか?

最初の1年間は、ヘルパーさんとデイサービスを組み合わせて何とか乗り切っていました。朝、母をデイサービスに送り出してから出勤し、夕方はヘルパーさんが来てくれる時間までに帰宅する。この綱渡りの生活を1年間続けました。

公務員の介護休暇制度も利用しました。地方公務員には年間5日の介護休暇(有給)があり、さらに介護休業として最大6ヶ月の休業が認められています。介護休暇の5日間は、母の通院付き添いや介護サービスの契約手続きに使いました。

Q: 両立が限界に達したのはいつですか?

母が倒れて1年半後、認知症の症状が出始めた時です。夜間に徘徊するようになり、私が見ていないと家から出て行ってしまう。デイサービスから帰宅した後と、夜間の見守りが必要になりました。

市役所の勤務は基本的に8時30分〜17時15分ですが、夜間に母の対応をしてほとんど眠れずに出勤する日が増えました。会議中に居眠りしてしまうこともありました。上司には事情を説明して理解してもらっていましたが、業務のパフォーマンスが目に見えて低下していました。

介護休業を取得することも考えましたが、6ヶ月の休業後に復帰しても、母の状態が改善する見込みはありません。休業は一時しのぎにしかならないと判断しました。

Q: 退職を決めるまでの葛藤を教えてください。

正直、ものすごく悩みました。公務員を辞めることは、安定した収入を失うことです。母の介護費用は月に約15万円(施設に入れない在宅介護の場合)。私の収入がなくなれば、経済的に行き詰まります。

でも、選択肢は限られていました。施設に入所させることも検討しましたが、要介護3では特別養護老人ホームの入所順位が低く、待機者が100人以上。有料老人ホームは月20〜30万円で、私の給料では賄えません。

市役所の福祉課で介護保険を担当していた経験があるので、制度の限界は身をもって知っていました。皮肉なことに、自分が住民に説明していた制度の不十分さを、自分自身が体験することになったんです。

最終的に、「介護しながらできる仕事に切り替える」という方針で退職を決めました。

Q: 辞職の手続きについて教えてください。

3ヶ月前に人事課に辞職の意思を伝えました。理由は「家庭の事情(介護)」として、上司にも人事課にも正直に話しました。公務員の場合、介護離職に対する理解は比較的ある方だと思います。慰留はされましたが、「介護休業を使い切ってからでは」という提案以外は強い引き止めはありませんでした。

辞職願は市長宛てに提出しました。理由欄には「一身上の都合」と記載しました。介護が理由であっても、辞職願に詳細を書く必要はありません。

退職手当は勤続9年で約200万円。これは当面の生活資金として、手をつけずに取っておきました。

重要なポイントとして、介護離職の場合は失業保険の受給要件に特例があります。通常、自己都合退職の場合は3ヶ月の給付制限がありますが、「正当な理由のある自己都合退職」として認められれば、給付制限なしで受給できます。介護離職はこの特例に該当する可能性が高いので、ハローワークで必ず確認してください。

Q: 退職後の生活と収入源について教えてください。

退職後は在宅で母の介護をしながら、行政書士の資格を活かしてフリーランスで仕事をしています。市役所時代に取得した行政書士資格が、ここで活きました。

在宅でできる業務(許認可申請書類の作成、相続手続きの支援など)を中心に受注しています。月収は約20万円程度。公務員時代の年収480万円からは大幅に減りましたが、母の介護保険サービスの費用と合わせてなんとかやっていける水準です。

介護保険の自己負担額を抑えるために、高額介護サービス費の制度も利用しています。世帯の収入が減ったことで自己負担の上限額が下がり、結果的に介護費用の負担は軽くなりました。

Q: 介護離職を考えている公務員へのアドバイスをお願いします。

まず、退職の前に使える制度を全て使い切ってください。介護休暇、介護休業、時短勤務、フレックスタイム(導入されている場合)。公務員は制度が整っている分、使わないともったいないです。

次に、退職後の収入源を確保してから辞めてください。私の場合は行政書士の資格がありましたが、資格がなくても在宅でできる仕事はあります。退職前に副業の準備を始めることは公務員法上できませんが、資格取得や情報収集は可能です。

辞職願の作成はこのサイトのテンプレートが便利です。介護離職であっても書式は通常の辞職と同じです。

最後に、一人で抱え込まないでください。地域包括支援センター、介護者の会、自治体の相談窓口など、支援のリソースは意外と多くあります。公務員として福祉行政に関わっていたからこそ言えますが、「助けを求めること」は弱さではありません。