# 激務の国家公務員を体調不良で退職|霞が関6年目の限界
インタビュー対象者プロフィール
- 名前: 藤田 健一さん(仮名)
- 年齢: 30歳
- 経験年数: 国家公務員 6年
- 勤務先: 中央省庁
- 現在: 退職後、シンクタンクの研究員として勤務
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Q: 霞が関の勤務実態はどのようなものでしたか?
入省してすぐに「ここは普通の職場ではない」と感じました。定時は17時15分ですが、17時に帰れる日は年に数えるほどです。通常でも21時〜22時退庁。国会会期中は日をまたぐことも珍しくありませんでした。
特にきつかったのが国会対応です。国会議員からの質問通告が前日の夜に届き、翌朝までに答弁書を作成しなければなりません。「今夜は帰れない」と分かった瞬間の絶望感は、経験した人にしか分からないと思います。省内のソファーで仮眠を取って、朝そのまま業務を続ける生活を何度も繰り返しました。
月の残業時間は常に100時間超え。過労死ラインの倍以上です。残業代は予算の上限があるため、実際の労働時間の半分程度しか申請できませんでした。いわゆる「サービス残業」です。
Q: 体調に異変を感じ始めたのはいつですか?
4年目の秋からです。まず不眠が始まりました。帰宅しても神経が高ぶって眠れない。眠れても3〜4時間で目が覚める。慢性的な睡眠不足が続きました。
次に消化器系の症状が出ました。胃痛、食欲不振、下痢。ストレス性の胃腸炎と診断されて胃薬を飲みながら出勤していました。体重は半年で10キロ落ちました。
精神面では、5年目の冬に限界が来ました。会議中に突然涙が出てきて止まらなくなったんです。周囲の目が怖くてトイレに駆け込みました。その夜、帰宅中の電車のホームで「このまま線路に落ちたら楽になるかな」と一瞬考えた自分に恐怖を感じて、翌日心療内科を受診しました。
診断はうつ病でした。
Q: 休職の判断はどうしましたか?
医師からは即座に休職を勧められましたが、担当している法案の提出時期と重なっていたので、2週間だけ待ってもらいました。今思えば、この2週間も無理をすべきではなかったと思います。
国家公務員の病気休暇は最大90日間(有給)。その後、休職に移行すると最大3年間の休職が可能です。休職中は最初の1年間は給料の約8割が支給されます。制度としては民間より手厚いです。
上司(課長)に「休みたい」と言った時、「今は困る」と言われるかと思いましたが、意外にも「ゆっくり休みなさい」と言ってくれました。上司自身も部下が倒れることへの恐怖を感じていたのかもしれません。
Q: 休職中に退職を決めた経緯を教えてください。
休職して最初の2ヶ月は、本当に何もできませんでした。ベッドから起き上がるのがやっとで、テレビを見る気力もない。シャワーを浴びるのも週に2〜3回がやっとでした。
3ヶ月目から少しずつ回復し始めて、散歩ができるようになりました。その頃に「復帰するかどうか」を考え始めました。
復帰を選んだ場合、同じ激務環境に戻ることは確実です。国家公務員の業務量は構造的な問題で、一個人の努力でどうにかなるものではありません。主治医からも「同じ環境に戻れば再発のリスクが高い」と言われました。
4ヶ月目に退職を決意しました。「国のために働く」という使命感は今も持っていますが、自分を壊してまで果たすべき使命ではないと思い至りました。
Q: 国家公務員の辞職手続きについて教えてください。
国家公務員の辞職願は、任命権者(大臣)宛てに提出します。実務的には、人事課を通じて提出する形です。休職中だったので、人事課の担当者に電話で意思を伝え、辞職願を郵送しました。
辞職願の書式は省庁ごとに定められています。私の場合は省の書式に従いましたが、このサイトのテンプレートも参考になると思います。理由は「一身上の都合」で問題ありません。
退職手当は勤続6年で約100万円でした。国家公務員の退職手当は勤続年数×支給率で計算されますが、自己都合退職の場合は支給率が低くなります。
重要な注意点として、退職日は月末にすることをお勧めします。月の途中で退職すると、その月の共済組合の資格を失い、すぐに国民健康保険への切り替えが必要になります。月末退職なら、翌月1日からの切り替えでスムーズです。
Q: 退職後の回復と現在の状況を教えてください。
退職後、半年間の療養期間を経て、シンクタンクの研究員として働き始めました。政策分析の仕事で、霞が関での経験がそのまま活きています。年収は公務員時代の約8割ですが、労働環境は比較にならないほど改善しました。定時退社が当たり前で、残業は月20時間程度です。
うつ病は寛解しましたが、今も月1回の通院と服薬は続けています。完全に薬を止められるのはもう少し先になりそうです。
Q: 同じ境遇の国家公務員にメッセージをお願いします。
霞が関の働き方は異常です。それは個人の努力不足ではなく、組織の構造的な問題です。「自分が頑張れば何とかなる」と思っている方、それは間違いです。頑張り続けた先にあるのは、心身の崩壊だけです。
体調に異変を感じたら、すぐに受診してください。国家公務員には共済組合のメンタルヘルス相談窓口もあります。「キャリアに傷がつく」と思って受診をためらう方が多いですが、休職の事実は転職時に開示する義務はありません。
病気休暇と休職の制度は手厚いので、まずは休むことを最優先にしてください。辞めるかどうかの判断は、体調が少し回復してからで十分です。追い詰められた状態での重大な判断は避けてください。
国家公務員の経験は、民間でも高く評価されます。政策立案能力、法律知識、利害関係者との調整力は、コンサル、シンクタンク、金融機関など、多くの業界で求められるスキルです。退職は「逃げ」ではなく、自分を守るための戦略的撤退です。