# 「異動をきっかけに辞めました」転勤・異動で退職を決めた公務員の体験談

異動という転機

公務員の人事異動は通常3〜4年ごとに行われます。新しい職場、新しい人間関係、新しい業務。この「リセット」が、人によっては人生の転機となります。

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事例1:40歳での異動で「残り20年のキャリア」を考えた

Pさん(43歳・元県庁 15年勤務)

県庁で総務課から企画課に異動したのが40歳の時でした。通常、異動は成長機会として捉えられますが、その時は違いました。

「残り25年、この仕事をするのか」。その問いが浮かびました。

総務課では10年いて、業務内容も人間関係も慣れていました。企画課での新しい挑戦よりも、「自分は人生の後半戦に入っている」という現実を直視させられた。

新しい課での業務は予想外に大変でした。企画政策は政治的な判断が絡み、提案がぽしゃることも多い。総務課のような「確実な業務遂行」ではなく、「提案と却下の繰り返し」。そのストレスに慣れるまでに3ヶ月。

その時に思いました。「このシステムの中で、あと25年頑張る気力がない」。

異動から半年後、退職を決めました。

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事例2:「異動のたびに人間関係が崩壊する」恐怖

Qさん(34歳・元市役所 8年勤務)

市役所で3年ごとに異動するのが慣例でした。

1度目の異動(3年目):新しい課に異動した時、前の課の同僚と一緒に異動する人は誰もいない。孤立しました。

2度目の異動(6年目):やっと新しい課での人間関係が構築できたと思った時点で、異動通知。その繰り返しへの疲労。

3度目の異動(予定の異動):通知を受けた時点で、「また一からやり直すのか」という脱力感。この時点で、退職を考え始めました。

公務員の組織では、個人の適性よりも「均等に異動させる」というシステムが優先されます。「この人は営業に向いている」「この人は企画に向いている」という個人の適性評価が、異動システムに反映されません。

異動のたびに、人間関係、やりがい、モチベーションがリセットされる。その負担に耐えきれなくなり、8年で退職を決めました。

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事例3:「田舎への転勤拒否」が退職のきっかけ

Rさん(38歳・元県庁 12年勤務)

県庁では、本庁と各地域の合同庁舎への異動が交互に行われます。

本庁勤務5年→地域合同庁舎4年→本庁への異動が内定していた時点で、「これはチャンス」と思いました。地域から本庁に戻るのは出世ルート。昇進試験の受験資格もいっそう充実する見込みでした。

しかし、異動先は「山間部の小さな町」でした。妻の実家は都市部。子どもは進学を控えた時期。家族は強く反対しました。

「異動拒否」という選択肢は、公務員には原則ありません。拒否すると、人事評価に大きなマイナスが付きます。人事評価が悪いと、昇進は絶望的。給与の昇給も抑制されます。

つまり、異動を拒否すれば、その後のキャリアは「罰せられる」ということです。

その選択肢の中で、「異動を受け入れるか、退職するか」の二者択一を突きつけられました。

12年間の経歴は大事です。でも、それ以上に「妻と子どもの人生」が大事。その判断の中で、退職を選びました。

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事例4:「新しい課での人間関係トラブル」での即座の退職

Sさん(31歳・元市役所 7年勤務)

市役所で7年勤務していた時、子ども育成課に異動しました。

新しい課の課長は、部下に非常に厳しい人でした。初日から「なぜ市役所に来た?国家試験に落ちたから?」と言われました。嫌味で、パワハラ寸前の発言です。

2週間で「この課長の下では働けない」と判断。課長に直接言わず、人事課に「課長の言動が適切でない」と相談しました。

しかし、公務員の人事課の回答は「もう少し様子を見てください」。

異動から1ヶ月で、心身に異変が出ました。朝が起きられない。職場に行く直前に嘔吐。医者に診てもらったら「適応障害」。

その診断書を持って人事課に行き、「この課での就業は困難」と説明しましたが、「課長と話し合ってみては」との返答。

妥協点を探る過程で、「異動の取り消し」と「退職」のどちらかを迫られました。

結果、退職を選びました。

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「異動を避けるために退職」の背景にあるもの

これらの事例から見えてくるのは、「異動というシステムの問題」です。

公務員の異動は、理論的には「全職員に平等に機会を与える」という名目です。しかし現実には:

  • 個人の適性が無視される
  • キャリア形成の自由度がない
  • 異動拒否の代償が大きすぎる
  • 異動のたびに人間関係がリセットされる

民間企業では「同じ部門で15年」「同じプロジェクトに携わり続ける」というキャリアが一般的です。その中で深い専門性が磨かれます。

しかし、公務員の異動システムでは、深さよりも「広さ」が優先されます。「ジェネラリスト」育成という理想のために、個人の成長機会が阻害されます。

この根本的な課題が、「異動をきっかけに退職する」という現象を生み出しています。

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異動での退職を検討している人へ

もし、異動をきっかけに退職を考えているなら:

  1. 1 1ヶ月待つ: 異動直後は判断力が鈍ります。1ヶ月経ってから改めて考えてください。
  2. 2 転職先を決めてから辞める: 異動の辛さから「逃げる」という形での退職は避けてください。
  3. 3 人事課に相談: 異動に問題(パワハラ、適性の著しい乖離)があれば、人事課に正式に相談してください。記録に残すことが重要です。
  4. 4 退職手当の確認: 異動から3ヶ月以内に辞めると、退職手当の計算が変わる場合があります。事前に確認してください。

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