# メンタル不調で公務員を辞めた体験談|復職か退職か迷った3ヶ月間
事例1:「適応障害と診断されるまで」
Aさん(35歳・元市役所 9年勤務)
市役所で9年勤務していた時、「体調がおかしい」と感じ始めました。
朝、目が覚めても「仕事に行かなければ」という強迫観念で、身体が動きません。トイレで30分、吐き気がおさまるまで過ごす。そのまま出勤して、14時まで耐えて、早引けの連絡をして帰宅。
その繰り返しが2週間。周囲の職員は「体調不良が続いているようですね」と気づき始めました。
上司から「一度、医者に診てもらったら」と勧められ、心療内科を受診。診断は「適応障害」。
適応障害の定義は「特定のストレッサー(環境の変化、人間関係など)に適応できず、著しい心身の不調が生じた状態」。
原因は、3ヶ月前の異動でした。新しい課での人間関係が構築できず、係長からの期待値が高く、毎日「自分は無能だ」というメッセージを受け続けていた。その累積がストレスになっていたんです。
医師からは「まずは休務することが重要」とアドバイスされました。
公務員の「病気休暇」は年間90日(3ヶ月)まで、有給です。その後、「休職」に移行すると、最大3年間の休業が認められます。休職中は最初の1年間、給料の8割が支給されます。
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事例2:「休職と復帰の判断」
休職を開始して、Aさんは以下のペースで回復していきました。
1ヶ月目:完全に寝込む。起き上がるのさえ困難。心療内科での通院と服薬が開始。
2ヶ月目:散歩ができるようになる。15分程度、近所を歩く。その後、疲労で寝込む。
3ヶ月目:本を読むことができるようになる。思考が少し戻ってくる。
4ヶ月目:「そろそろ仕事の情報を集めてもいいか」と思い始める。市役所の情報を検索。その時点で「復帰への不安」が生じる。
その時点で、Aさんが考えたのが「復帰するべきか、退職すべきか」という選択肢です。
医師のアドバイスは「体調は70%程度に回復している。復帰は可能」。ただし「同じ環境(異動前の課)での復帰が条件」。
市役所の人事課と相談した結果、「復帰は可能だが、異動後の課での配置継続」という条件。つまり「回復したら、同じ環境に戻してもらう」という約束がなかった。
その時点で、Aさんは「同じ環境に戻ったら、また適応障害が再発するのでは」という懸念が生じました。
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事例3:「『復帰か退職か』の3ヶ月間」
5ヶ月目から8ヶ月目は、Aさんが「復帰か退職か」の葛藤に苦しむ時期でした。
- 公務員としての身分が継続
- 給料が100%支給される(現在は80%)
- 年金加入が継続される
- 退職金が減らない
- 同じストレス環境に戻る可能性
- 再発のリスク
- 精神的な不安定さが残る
- ストレス環境から完全に解放される
- 新しい環境での「リスタート」が可能
- 回復に専念できる
- 公務員としての身分喪失
- 給料が減(失業保険での補填)
- 退職金が自己都合退職のため支給率低下
- 年金が共済年金から国民年金に変更
この「メリット・デメリット」を天秤にかけながら、3ヶ月間迷い続けました。
妻からは「体調が回復するまで、無理は避けてほしい」とアドバイス。ただし「経済的な不安」も念頭にあり、完全には「退職を勧める」とは言いませんでした。
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事例4:「退職の決断」
9ヶ月目に、Aさんは退職を決めました。
理由は「復帰しても、同じ環境での不安が払拭できない」ということ。
医師からも「無理な復帰は、再発のリスクが高い。退職して新しい環境での仕事を探す方が、長期的には心身の回復に有利」とアドバイスを受けました。
退職手当は、勤続9年で約190万円(税抜き)。手取りは約140万円。
失業保険は「メンタル疾患による自己都合退職」として「正当な理由のある自己都合」と認定され、給付制限が撤廃。月額約18万円が5ヶ月間。合計90万円。
その140万円 + 90万円 = 230万円が、退職後の生活資金。それで、転職活動を開始しました。
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事例5:「退職後の転職と回復」
退職後、Aさんは以下のペースで進みました。
1ヶ月目:完全に仕事を休む。心身の回復に専念。
2ヶ月目:転職活動を開始。ただ、面接での「退職理由」を説明するのが困難。メンタル疾患を理由に退職したことを、民間企業にどう説明するか。
3ヶ月目:転職エージェントに相談。結果として「メンタル疾患での退職」は、転職市場では「ネガティブ」に判定される可能性が高いと指摘。
代わりに「キャリアの見直しの時期」「新しい環境での挑戦を求めている」という前向きな理由に、退職理由を修正。
4ヶ月目:2社から内定。1社は「人材育成企業」。給料は公務員時代より低い(月33万円)が「自由度の高い職場」。その企業を選択。
5ヶ月目以降:転職先での勤務開始。最初は「新しい環境の適応」に時間がかかりました。ただ、市役所と異なる「オープンな人間関係」と「成果主義」の中で、仕事のやりがいが生まれました。
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他の事例:異なる退職パターン
Aさんとは異なり、「復帰を選択した」公務員もいます。
Bさん(40歳・元県庁 14年勤務): 適応障害で休職後、復帰を選択。その後、異なる課での配置を得ました。その新しい環境で、仕事のやりがいが生まれ、現在も県庁で勤務を続けています。
給料は「昇進が遅れた」ため、同期より低い水準ですが「心身の安定」を優先した判断として、本人は満足しています。
Cさん(32歳・元市役所 7年勤務): うつ病で長期休職(1年間)。復帰を試みたが、再発。最終的に退職。
現在はNPOで働いており「社会貢献」という仕事のやりがいの中で、心身の状態が安定しています。
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メンタル疾患での退職と手続き
重要な法的知識:
メンタル疾患での自己都合退職は「正当な理由のある自己都合」として認定されることがあります。その場合:
- 失業保険の給付制限(3ヶ月)が撤廃
- 即座に給付が開始される
- 月額約18万円が4〜5ヶ月
ハローワークの窓口で「メンタル疾患による退職」と説明し「正当な理由のある自己都合」の認定を求めてください。医師の診断書があると、認定がスムーズです。
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公務員のメンタル疾患への対応
公務員のメンタル疾患は「決して珍しくない」です。統計によると、公務員の心身不調での休職率は民間企業より高い傾向にあります。
- 人事異動による環境変化の頻繁さ
- 人間関係の複雑性(上下関係の厳格さ)
- 残業時間の多さ(特に中央官庁)
- 創造性よりも「規則遵守」を求める組織文化
そのような環境での「メンタル疾患」は、個人の責任ではなく、組織の構造的問題の場合が多い。
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メッセージ
メンタル疾患で休職している公務員の方へ。
「復帰か退職か」は、医学的な判断だけでなく「人生設計」の判断でもあります。給料、年金、退職金の「経済的なメリット」と「心身の回復」「新しいキャリア」のメリットを、慎重に比較してください。
また「メンタル疾患での退職は恥ずかしい」という思いを持つ必要はありません。むしろ「自分の心身を守るための決断」として、誇りを持ってください。
転職市場では「メンタル疾患での退職」は「ネガティブ」に見えるかもしれませんが、その経験を通じた「自己認識」「メンタルヘルスリテラシー」は、新しい環境での「強み」になります。
退職届のテンプレートは、このサイトで無料提供されています。