インタビュー対象者プロフィール
- 名前: 鈴木 あかりさん(仮名)
- 年齢: 29歳
- 経験年数: 医療事務歴6年
- 勤務先: 皮膚科クリニック(医師1名、看護師2名、医療事務2名)
- 現在: 別の眼科クリニックで医療事務として勤務中
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Q: 退職を考え始めたきっかけを教えてください。
入職した当初は穏やかだった院長が、3年目くらいから態度が変わり始めました。患者数が減った時期と重なって、スタッフへの当たりが強くなったんです。最初はレセプトのミスを厳しく指摘される程度でしたが、だんだんエスカレートして、患者さんの前で「こんなこともできないのか」と怒鳴られることが増えました。
Q: 具体的にはどのようなことがありましたか?
一番つらかったのは、他のスタッフの前で人格を否定するような発言をされたことです。「お前は使えない」「辞めたければ辞めろ」と言われることが日常的になりました。レセプトの返戻があると「お前のせいで損失が出た」と言われ、実際には院長の診療内容の記載不備が原因だったこともあります。でも反論すると余計に怒りが増すので、黙って耐えるしかありませんでした。
Q: 誰かに相談しましたか?
最初は同僚の医療事務の方に相談していました。彼女も同じように感じていたので、お互いに愚痴を言い合って気持ちを保っていました。でも根本的な解決にはなりませんでした。その後、労働基準監督署に電話で相談しました。「証拠を残しておくこと」「退職届を出せば2週間で辞められること」を教えてもらい、少し気持ちが楽になりました。
Q: 退職を決断した決定的なきっかけは?
ある日、院長が怒鳴った後に処方箋を投げつけてきたんです。その瞬間、「もう限界だ」と思いました。帰宅後すぐに転職サイトに登録して、翌週には退職届を書きました。家族にも相談して、「体を壊す前に辞めた方がいい」と背中を押してもらいました。
Q: 退職届を出した時の状況を教えてください。
院長に直接渡しました。「退職届です。来月末で退職させていただきます」と伝えたところ、「急に言われても困る」「後任が見つかるまで待て」と言われました。でも、もう限界だったので「申し訳ありませんが、退職日は変更できません」と伝えました。民法上、退職届を提出すれば2週間で退職できることは事前に調べていたので、1か月の猶予を設けたのは十分だと思っていました。
Q: 退職までの1か月間はどのような雰囲気でしたか?
正直、気まずかったです。院長からはほとんど話しかけられなくなりましたが、逆にそれが楽でした。引き継ぎ資料は作成しましたが、後任が決まらないまま退職日を迎えました。同僚の医療事務の方には申し訳ない気持ちでいっぱいでしたが、彼女も「自分も近いうちに辞めるから気にしないで」と言ってくれました。
Q: パワハラの証拠は残していましたか?
労基署のアドバイスを受けてから、院長に怒鳴られた日時と内容をスマホのメモに記録するようにしました。録音はしませんでしたが、日時・場所・発言内容・目撃者を記録していました。結果的に労災申請や訴訟はしませんでしたが、証拠を残しておいたことで「いざとなれば戦える」という安心感がありました。
Q: 転職先はすぐに見つかりましたか?
退職届を出す前から転職活動は始めていました。医療事務の経験があれば求人は多いので、1か月ほどで3つの内定をもらえました。面接では「前職の退職理由」を聞かれましたが、パワハラの詳細は話さず「スキルアップのため」と答えました。転職先の院長は穏やかな方で、今は安心して働けています。
Q: 同じような状況にいる方にアドバイスをお願いします。
「もう少し我慢すれば状況が変わるかも」と思って耐え続ける方が多いですが、パワハラは基本的にエスカレートします。早めに証拠を残し始めること、外部の相談窓口(労基署、都道府県の労働相談窓口)を利用することをおすすめします。小規模クリニックは院長が絶対的な権力を持っているので、内部での解決は難しいことが多いです。医療事務は転職しやすい職種なので、心身を壊す前に動いてほしいです。