インタビュー対象者プロフィール

  • 名前: 加藤 裕介さん(仮名)
  • 年齢: 28歳
  • 経験年数: 6年(SIer系企業に5年勤務後、退職)
  • 前職: SIer系企業でWebシステム開発
  • 現在: 療養後、フリーランスエンジニアとして復帰

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Q: 体調を崩し始めたのはいつ頃からですか?

3年目の秋からです。大規模な基幹システムの刷新プロジェクトにアサインされて、最初から炎上していました。要件定義が曖昧なまま開発に入って、仕様変更の嵐。でもリリース日は動かない。

残業が月80時間を超え始めて、4年目には月100〜120時間になっていました。終電で帰って、朝8時に出社。土日も出勤。家に帰っても寝るだけの生活が1年以上続きました。

Q: 身体に異変が出始めたのは?

最初は頭痛と肩こりでした。デスクワークのせいだと思っていたんですが、次第に不眠になりました。布団に入っても頭の中でコードが回っていて眠れない。眠れても2〜3時間で目が覚めて、そのまま朝になる。

4年目の冬、突然涙が止まらなくなりました。会社のトイレで。特に嫌なことがあったわけでもないのに、涙が出て止まらない。「おかしい」と思って心療内科を受診したら、「うつ病」と診断されました。

Q: 会社にはどう対応しましたか?

医師から「2ヶ月の休養が必要」という診断書が出たので、上長に提出しました。上長の反応は「プロジェクトの佳境なのに困る」「せめて今のタスクを片付けてから休んでくれ」と。正直、この時点で会社への信頼はゼロでした。

人事部に直接連絡して、翌日から休職に入りました。上長は不満そうでしたが、診断書がある以上、会社も拒否できません。

Q: 休職と退職、どちらを選びましたか?

最初は休職して2ヶ月で復帰するつもりでした。でも休職中に冷静になって考えたら、「復帰したら同じプロジェクトに戻される」と気づいたんです。会社に確認したら、やはり同じチームへの復帰が前提でした。

「また同じ環境に戻ったら、確実に再発する」と医師にも言われました。休職3ヶ月目に退職を決意して、退職届を郵送で提出しました。宛名は代表取締役社長、理由は「体調不良により業務の継続が困難なため」です。

Q: 退職後の経済面はどうでしたか?

休職中から傷病手当金を受給していたので、退職後も引き続き受給しました。基本給の約3分の2が最大1年6ヶ月支給されるので、すぐに生活に困ることはありませんでした。

ただ、住民税の請求が来たときは焦りました。前年の年収ベースで計算されるので、収入がないのに月3〜4万円の請求が来る。傷病手当金から支払うのはきつかったですね。退職前に住民税の支払い方法(一括 or 分割)を確認しておくことをおすすめします。

Q: 回復までどのくらいかかりましたか?

半年間は何もできませんでした。PCの画面を見るだけで動悸がする状態で。プログラミングのことを考えるのも嫌になって、「もうエンジニアには戻れないかもしれない」と思っていました。

8ヶ月目くらいから、少しずつ個人開発を再開しました。誰にも見せない、自分だけのプロジェクト。プレッシャーがない状態でコードを書いたら、「やっぱりプログラミングは好きだな」と思えました。それが回復の転機でした。

Q: 復職はどのように?

退職から1年後、フリーランスとして復帰しました。最初は週3日、1日6時間からスタート。「自分でコントロールできる働き方」を最優先にしました。

フリーランスにした理由は、「働く時間と案件を自分で選べる」からです。炎上しそうな案件は断れるし、体調が悪ければ休める。正社員時代にはなかった自由です。年収は正社員時代と同程度ですが、稼働時間が半分なので、時給換算では倍以上。

エンジニアで体調を崩している方に伝えたいのは、「技術力は失われない」ということ。休んでいる間にスキルが陳腐化する不安はありますが、基礎的なプログラミング能力は簡単には消えません。まずは心と体を回復させてください。