退職届を出した後に「やはり辞めたくない」と考え直すケースは珍しくありません。ここでは建設業における退職届の撤回の可否について、法的な観点から解説します。
退職届と退職願の違い
撤回の可否を理解するには、まず退職届と退職願の法的な違いを押さえる必要があります。
退職届
退職届は一方的な意思表示(解約の告知)です。民法627条1項に基づき、雇用期間の定めがない場合、退職届を提出してから2週間の経過により雇用契約は終了します。
退職願
退職願は合意解約の申し込みです。会社側が承諾するまでは法的な拘束力がなく、原則として撤回が可能です。
退職届の撤回は原則として不可
退職届は一方的な意思表示であるため、相手方に到達した時点で効力が発生します(民法97条1項)。そのため、会社に届いた後は原則として撤回することができません。
例外的に撤回が認められるケース
以下のような事情がある場合は、退職届の撤回(意思表示の取消し)が認められる可能性があります。
- 錯誤(民法95条): 重大な勘違いがあった場合
- 詐欺・脅迫(民法96条): 「辞めなければ懲戒解雇にする」と脅されて退職届を書いた場合など
- 会社側の合意: 会社が撤回を認めてくれる場合
退職願の撤回
退職願の場合は、会社側が承諾する前であれば撤回が可能です。ただし、会社のどの立場の人が「承諾の権限」を持つかがポイントになります。
承諾権限者の例
- 中小規模の建設会社: 代表取締役社長や取締役
- 大手ゼネコン: 人事部長や人事担当役員
- 支店採用: 支店長
直属の上司(現場所長や工事部長)が「わかった」と言っただけでは、正式な承諾とはみなされないケースが多いです。最終的な承諾権限者が承諾する前であれば、撤回の余地があります。
建設業で撤回を申し出る際の注意点
早めに行動する
撤回を考えたら、できるだけ早く上司に相談しましょう。会社側が後任の手配や配置変更を進めてしまうと、撤回が認められにくくなります。
書面で申し出る
口頭だけでなく、退職届撤回申出書を書面で提出すると記録が残ります。
引き留めの結果として残る場合
建設業では人手不足のため、会社側が積極的に引き留めてくれるケースもあります。その場合、以下の点を確認しましょう。
- 待遇改善の約束が口頭だけでないか(書面で確認)
- 配置転換や現場変更の具体的な内容
- 退職を申し出たことによる不利益な扱いがないか
撤回が認められなかった場合
撤回が認められず退職することになった場合は、以下の対応を検討しましょう。
- 退職日までの残り期間を誠実に勤務する
- 引き継ぎを丁寧に行い、良好な関係を維持する
- 同業界での再就職を視野に入れる(建設業界は人脈が重要)
まとめ
退職届は原則撤回不可、退職願は承諾前なら撤回可能です。迷いがある場合は、最初から退職届ではなく退職願を提出するのが安全です。また、退職届を出す前に十分な検討期間を設け、後悔のない判断をすることが大切です。