インタビュー対象者プロフィール

  • 名前: 岡田 拓也さん(仮名)
  • 年齢: 30歳
  • 経験年数: 建設業歴8年(施工管理)
  • 勤務先: ゼネコン
  • 資格: 2級建築施工管理技士
  • 担当: オフィスビル改修工事

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Q: どのようなパワハラを受けていましたか?

建設業の現場は体育会系の文化が根強くて、怒鳴ることが「指導」とされる風潮があります。私の上司(工事部長)は特にひどくて、毎朝の朝礼後に個別に呼び出して「昨日の報告書のここがダメだ」「なんでこの手配ができないんだ」と30分近く詰めてくる。

現場での対応を目の前で否定されることも日常茶飯事でした。職人さんの前で「お前は使えない」と言われたときは、その後の現場管理が本当にやりづらかった。職人さんからも「所長に怒られてるやつの指示なんて聞けるか」と言われ、板挟み状態でした。

Q: 長時間労働も問題だったのですか?

朝は6時半に現場入り、夜は書類作業で21時、22時まで。土曜日は基本出勤、日曜も月に2回は現場が動く。月の残業時間は100時間を超えることもありました。2024年4月から建設業にも残業上限規制(時間外労働の上限は原則月45時間・年360時間)が適用されましたが、うちの会社は「36協定の特別条項」で月80時間までOKという形骸化した対応でした。

実際には80時間どころか100時間超え。でも「勤怠は80時間で入力しろ」と暗黙の圧力がありました。サービス残業です。

Q: 退職を決意したきっかけは?

大雨の中で現場を止める判断を私がしたとき、上司から電話で「なんで勝手に止めた」と怒鳴られました。安全を考えて判断したのに。その後、報告書にも「判断ミス」と書かれ、評価を下げられました。

その夜、帰宅してシャワーを浴びながら「なんで自分はこんなことをしているんだろう」と思いました。安全を守る判断が否定される会社で、この先何十年も働くのかと。翌日から転職活動を始めました。

Q: 退職は簡単でしたか?

簡単ではなかったです。まず、転職先を決めるのに3ヶ月かかりました。建設業からの転職は、同業他社か異業種かで大きく変わります。私は「もう現場には戻りたくない」と思って、建設テック企業のプロジェクトマネジメント職に応募しました。

内定後、上司に退職を伝えたら案の定「裏切り者」扱いです。「この忙しい時に辞めるのか」「後任はどうする」と。でも、退職届を出せば法的には2週間で辞められます。就業規則では1ヶ月前でしたので、1ヶ月後の退職を主張しました。

最終的には会社も折れて、1ヶ月半後の退職で合意。引き継ぎ資料を作成し、後任に現場を案内して終わりました。

Q: 退職届の書き方で気をつけたことは?

ゼネコンは組織が大きいので、退職届の宛名は代表取締役社長名。提出先は直属の上司経由で人事部。「一身上の都合」で淡々と書きました。

パワハラの記録は退職届とは別に保管しています。サービス残業の記録もスマホのメモに残してありました。退職後に労働基準監督署に相談して、未払い残業代の請求も行いました。結果的に約50万円が支払われました。

Q: 転職後の変化を教えてください。

建設テック企業では、BIM/CIM(建設情報モデリング)のプロジェクトマネジメントを担当しています。建設現場の知識が直接活きるし、ITスキルも身につく。残業は月20時間程度で、土日は完全に休み。年収は50万円ほど下がりましたが、時給換算では大幅にアップしました。

何より、人間として扱ってもらえる。意見を言っても怒鳴られない。ミスをしても「次はどうすればいい?」と建設的に話し合える。当たり前のことが、前の会社ではできなかったんです。

Q: パワハラに悩む建設業従事者にアドバイスはありますか?

「建設業はこういうもの」と諦めないでください。2024年の働き方改革で、業界全体が変わろうとしています。パワハラを容認する会社は、今後淘汰されていきます。

まず記録を残すこと。日時、場所、発言内容、できれば録音。次に相談窓口を利用すること。社内のハラスメント窓口が機能していなければ、労働基準監督署や弁護士に相談を。

転職先は同業他社だけでなく、建設テック、不動産管理、公務員(技術職)など幅広く検討してください。施工管理の経験は「現場を管理する力」であり、業界を超えて通用するスキルです。

退職届は感情を入れず事務的に。パワハラの清算は退職後に法的手続きで行うのが賢明です。