インタビュー対象者プロフィール

  • 名前: 藤田 健一さん(仮名)
  • 年齢: 35歳
  • 経験年数: 建設業歴10年(施工管理)
  • 勤務先: ゼネコン
  • 資格: 1級建築施工管理技士
  • 家族構成: 妻、長女(7歳)、長男(4歳)

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Q: 家庭との両立で困っていたことは何ですか?

大手ゼネコンの施工管理は全国転勤が当たり前です。現場が終わると次の現場に異動。新卒で入社してから10年間で7回の異動、うち4回は単身赴任でした。子どもが生まれてからは、週末に会いに帰る生活。月曜の朝、泣く子どもを残して出発するのが本当につらかった。

長女の入学式に行けなかったときは、さすがに涙が出ました。妻に「パパいないの?」と聞く娘の動画を見て、「こんな生活をいつまで続けるのか」と。

Q: 会社に相談はしましたか?

人事に「自宅から通える現場にしてほしい」と何度もお願いしました。でも、「会社の都合で配置を決めるので、個人の要望には応えられない」と言われるだけ。大手ゼネコンは全国にプロジェクトがあるので、希望勤務地はほぼ通りません。

時短勤務制度は制度上は存在しましたが、施工管理で時短勤務した人は見たことがない。現場は朝から晩まで回っているのに、「17時に帰ります」なんて現実的に不可能でした。

Q: 妻の意見はどうでしたか?

妻はワンオペ育児の限界を感じていました。仕事を辞めて育児に専念してくれていたんですが、二人目が生まれてからは特に大変で。夜泣きの対応、保育園の送り迎え、子どもの病気、全部一人。「私は一人で二人の子どもを育てるために結婚したんじゃない」と言われたこともあります。

夫婦で何度も話し合って、「このままでは家庭が壊れる」という結論になりました。転職して年収が下がっても、家族一緒に暮らせる方がいいと、二人で決めました。

Q: 転職活動はどう進めましたか?

条件は「転勤なし」「土日休み」「残業月30時間以内」の3つ。年収が下がることは覚悟の上でした。

建設業界に強いエージェントに登録して、設備管理、デベロッパー、公務員の技術職などを検討しました。最終的に、地元の自治体の建築技術職(中途採用)に応募して合格。年収は700万円から520万円に下がりましたが、完全週休二日、残業は月10時間程度、転勤なし。

Q: 上司への退職の伝え方は?

担当現場の竣工が見えてきたタイミングで、部長に「退職したい」と伝えました。1級施工管理技士を持つ中堅を失うのは会社にとって痛手なので、当然引き止められました。「年収を上げる」「希望の現場に配属する」と言われましたが、これまで何度もお願いして聞いてもらえなかったのに、辞めると言った途端に条件が変わるのは信用できませんでした。

「家族との時間を最優先にしたい」と繰り返し伝え、最終的には理解してもらいました。退職届は竣工後に提出。「一身上の都合」で、代表取締役社長宛。人事部に提出しました。

Q: 転職後の生活はどう変わりましたか?

劇的に変わりました。毎日家に帰れる。土日は子どもと公園に行ける。長女の参観日に行ける。運動会で応援できる。「普通の父親」になれたんです。

年収は180万円下がりましたが、単身赴任の二重生活費がなくなったので、実質的な手取りはそこまで変わりません。むしろ、外食や出張の交通費がなくなって家計は改善しました。妻もパートを始めて、世帯収入は前とほぼ同水準になりました。

子どもが「パパ、今日も一緒に寝よう」と言ってくれるのが、何よりの幸せです。

Q: ワークライフバランスに悩む建設業従事者にアドバイスはありますか?

「年収が下がる=不幸になる」ではありません。私は年収180万円ダウンで、幸福度は10倍以上になりました。家族との時間、健康、心の余裕。お金では買えないものを手に入れました。

転職先として、自治体の技術職はおすすめです。1級施工管理技士があれば中途採用で有利。設備管理、不動産管理も転勤が少なく安定しています。

退職のタイミングは現場の切れ目がベスト。途中で抜けると後任や協力業者に迷惑がかかります。退職届は早めに出して、引き継ぎ期間を十分に確保してください。

そして、家族とよく話し合うこと。転職は自分一人の問題ではありません。夫婦で価値観を共有して、一緒に決断することが大切です。