インタビュー対象者プロフィール
- 名前: 中島 翼さん(仮名)
- 年齢: 29歳
- 経験年数: 建設業歴7年(施工管理)
- 勤務先: ゼネコン
- 資格: 2級土木施工管理技士
- 症状: 腰椎ヘルニア、適応障害
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Q: 体調を崩した経緯を教えてください。
入社してからずっと土木の現場で施工管理をしてきました。道路工事、河川工事、下水道工事など。夏は炎天下で40度近い気温の中、冬は凍えるような寒さの中で一日中立ちっぱなし。重い測量機器を担いで現場を歩き回る日々でした。
5年目の冬に、現場で測量機器を持ち上げた瞬間、腰に激痛が走りました。その場でしゃがみ込んで動けなくなり、救急車で搬送されました。MRIで腰椎椎間板ヘルニアと診断。医師からは「しばらく安静に」と言われましたが、現場は止められない。1週間で無理やり復帰しました。
Q: メンタル面の不調はいつからですか?
腰を痛めてから、体が思うように動かない焦りとストレスが溜まりました。痛み止めを飲みながらの仕事で、集中力が落ちてミスが増える。上司からは「しっかりしろ」と叱られ、職人さんからは「所長、大丈夫か?」と心配される。
6年目に入った頃から、朝起き上がれなくなりました。目覚ましが鳴っても体が動かない。「現場に行きたくない」ではなく、「体が動かない」。日曜の夜になると動悸がして眠れない。食欲もなくなって、体重が3ヶ月で8キロ落ちました。
妻に勧められて心療内科を受診したら、「適応障害」と診断されました。原因は「過重労働とストレス」。
Q: 休職はしましたか?
心療内科の診断書を会社に提出して、3ヶ月の休職に入りました。最初の1ヶ月は本当に何もできなくて、一日中ベッドで過ごしていました。罪悪感がすごくて、「自分は弱い人間だ」「みんな同じ環境で頑張っているのに」と自分を責めていました。
2ヶ月目くらいから少しずつ外出できるようになって、散歩をしたり、図書館に行ったり。主治医のカウンセリングを受けながら、自分がなぜこうなったのかを整理していきました。
3ヶ月で復帰する予定でしたが、復帰面談で「同じ現場に戻る」と言われて、体が拒否反応を起こしました。主治医とも相談して、「この会社での復帰は難しい」と判断し、退職を選びました。
Q: 退職届はどう提出しましたか?
休職中だったので、退職届は郵送で提出しました。上司と直接会うのが難しい状態だったので、内容証明郵便で送りました。宛名は代表取締役社長名。「体調不良により業務の継続が困難となりましたので」という理由です。
会社からは「もう少し休んでから考えたら」と電話がありましたが、気持ちは固まっていたので、丁重にお断りしました。離職票には「体調不良による退職」と記載してもらい、失業保険の手続きもスムーズでした。
Q: 回復までどのくらいかかりましたか?
退職してから本格的な回復まで約半年かかりました。腰椎ヘルニアはリハビリと筋トレで改善。適応障害は投薬とカウンセリングを続けて、徐々に社会生活に戻れるようになりました。
回復の転機は、「建設業を離れる」と決断したことです。「現場に戻らなくていい」と思った瞬間、肩の荷が下りた感覚がありました。その後、建設関連のCADオペレーターとして再就職。内勤で体への負担も少なく、規則正しい生活が送れるようになりました。
Q: 体調不良で悩んでいる建設業従事者にアドバイスはありますか?
「根性で乗り切る」は間違いです。建設業には「気合と根性」の文化がありますが、体と心が壊れたら取り返しがつきません。異変を感じたらすぐに医療機関を受診してください。
休職は恥ずかしいことではありません。労働者の権利として、健康保険の傷病手当金(給与の約2/3)を受け取りながら療養できます。会社の休職制度を確認して、使えるものは使ってください。
退職届は郵送でも有効です。パワハラ上司に直接会えない場合は、内容証明郵便で送れば法的に問題ありません。退職代行を利用するのも一つの手です。
そして、建設業以外にも道はあります。CADオペレーター、積算、建設コンサル、設備管理など、体への負担が少ない仕事で建設の知識を活かすことは十分可能です。まずは自分の体を守ることを最優先にしてください。