インタビュー対象者プロフィール

  • 名前: 小林 雄大さん(仮名)
  • 年齢: 31歳
  • 経験年数: 建設業歴8年(施工管理)
  • 勤務先: 建設会社
  • 資格: 1級土木施工管理技士、測量士補
  • 担当: 公共工事(道路・河川)

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Q: 将来性に不安を感じた理由は何ですか?

地方の中小建設会社で公共工事をメインにやってきました。8年目の年収は420万円。1級土木施工管理技士の資格手当が月1万円ついてこれです。東京の大卒同期は年収600万円をもらっている。地方とはいえ、資格を持って現場を回している人間がこの待遇では、やっていられないと感じました。

さらに深刻なのが人手不足です。うちの会社も若手が入ってこない。60代のベテラン職人が引退したら、現場を回せる人がいなくなる。社長は「なんとかなる」と言っていましたが、私から見れば「なんともならない」のが明白でした。

Q: 業界全体の状況をどう見ていましたか?

建設業の就業者数は、ピーク時の685万人(1997年)から約480万人(2023年)まで減少しています。高齢化率も高く、55歳以上が約35%を占める一方、29歳以下は約12%。あと10年で大量退職が始まったとき、業界がどうなるのか。

2024年問題(残業上限規制の適用)で、働き方改革を進めなければならないのに、人が足りなくて工期が延びる。コストは上がるのに受注単価は上げられない。特に中小建設会社は体力的に厳しい。自分の会社が10年後に存続しているか、正直疑問でした。

Q: 異業種転職への踏ん切りはどうつけましたか?

30歳の誕生日に「このまま10年後、自分はどうなっているか」を想像しました。年収は良くて500万円、体はボロボロ、後輩も入ってこなくて人手不足の現場を一人で回している。そんな未来が見えて、ゾッとしました。

転職エージェントに相談したら、「30歳前後で施工管理技士の資格を持っている方は、異業種でも引く手あまた」と言われました。特に不動産、インフラ、建設テック業界では「現場を知っている人材」が求められていると。

「30代前半のうちに動かないと、35歳を超えたら異業種転職は難しくなる」というアドバイスが背中を押しました。

Q: 転職活動の実態を教えてください。

転職エージェント2社と転職サイト1つを並行して使いました。応募したのは5社。建設テック企業2社、不動産管理会社1社、インフラ企業1社、メーカーの設備管理1社です。

面接で強調したのは、「現場管理のスキルはプロジェクトマネジメントそのもの」という点。工程管理、品質管理、安全管理、原価管理の「4大管理」は、どの業界でも通用するフレームワークです。公共工事の書類作成能力も「正確な文書作成能力」として評価されました。

最終的に、インフラ企業の設備管理部門に内定。年収は480万円で60万円アップ、福利厚生は段違いに良くなりました。

Q: 退職時のことを教えてください。

社長に直接伝えました。中小企業なので、社長との距離が近い。「異業種に挑戦したい」と率直に話しました。社長は「お前がいなくなると困る」と言いましたが、「この会社の将来が心配」とは言えなかったので、「自分のキャリアを考えた結果」と伝えました。

退職届は社長宛に「一身上の都合」で提出。引き継ぎは現場のファイル一式と、行政との折衝の経緯、協力業者のリストを整理して後任に渡しました。小さな会社なので、引き継ぎ相手がなかなか決まらず、最終的に社長が自ら現場に入ることになって申し訳なかったです。

最終日には職人さんたちとも挨拶をして、「小林所長にはお世話になった」と言ってもらえて嬉しかった。

Q: 転職後の待遇変化はどうですか?

年収60万円アップに加えて、完全週休二日、年間休日125日、残業月20時間程度。建設業時代は年間休日80日、残業月80時間だったので、天と地の差です。時給換算では2倍近くになっています。

仕事内容も、インフラ設備の点検・保守計画の策定がメインで、建設の知識が直結します。「この設備は設置から何年で更新が必要」「この工事ならこの工法が最適」といった判断に、現場経験が活きています。

Q: 将来に不安を感じている建設業従事者にアドバイスはありますか?

不安を感じているなら、それは正常な感覚です。建設業界は構造的な問題を抱えていて、特に中小企業は厳しい状況が続きます。「この業界にいて大丈夫か」と思ったら、まず転職市場で自分の価値を確認することから始めてください。

施工管理の経験は「プロジェクトマネジメント能力」として、どの業界でも高く評価されます。特に30代前半なら、異業種転職のチャンスは十分にあります。

転職するなら35歳がボーダーライン。それを超えると未経験業界への転職は一気に難しくなります。行動するなら今です。

退職時は円満に、感謝を持って。建設業界は人のつながりが濃いので、前の会社と良好な関係を維持しておくことは将来の財産になります。