インタビュー対象者プロフィール
- 名前: 松田 大輔さん(仮名)
- 年齢: 31歳
- 経験年数: 8年(特養に7年半勤務後、転職)
- 前職: 社会福祉法人の特別養護老人ホーム
- 現職: IT企業の介護テック部門(営業職)
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Q: 待遇面での不満を具体的に教えてください。
介護福祉士の資格を取って、リーダーにもなって、夜勤も月5回やって、年収は380万円でした。8年目でこれです。処遇改善加算が年々増えていると報道されていますが、実際に手元に来る金額は月1〜2万円程度。基本給は15万円台のまま、ほとんど上がっていませんでした。
友人の結婚式に出席するたびに、ご祝儀の3万円が痛くて。同世代の友人は「ボーナスで車を買った」とか話しているのに、自分のボーナスは手取り20万円ちょっと。惨めに感じることが正直ありました。
Q: 将来への不安はどのようなものでしたか?
「このまま介護を続けて、40歳、50歳になったとき、体力は持つのか」「結婚して子どもができても、この給料で家族を養えるのか」という不安がずっとありました。
ケアマネの資格を取ればデスクワーク中心になれますが、ケアマネの平均年収も400万円前後。管理者(施設長)になれば500万円超えますが、ポストは限られているし、経営の責任も重い。介護業界の中でキャリアアップしても、天井が低いんです。
Q: 異業種への転職をどう決断しましたか?
きっかけは、施設に導入された見守りセンサーのメーカーの営業担当と話したことです。その人が「介護現場の経験がある人に来てほしい」と言っていて。調べてみたら、介護テック(介護×IT)の業界が伸びていて、介護の現場経験を持つ人材を求めている企業がいくつもあることがわかりました。
「介護の仕事そのものは好きだけど、介護施設で働き続けるのは限界がある」と思っていたので、介護業界に関わりながら待遇を改善できる道があると知って、一気に気持ちが動きました。
Q: 転職活動はスムーズでしたか?
正直、苦労しました。介護職から一般企業への転職は、職務経歴書の書き方がわからないし、面接でのアピールポイントもわからない。一般向けの転職エージェントに登録して、アドバイザーに一から教えてもらいました。
介護の経験を「対人コミュニケーション力」「チームマネジメント経験」「課題解決力」に置き換えて表現する練習をしました。面接を5社受けて、2社から内定。介護テックのスタートアップと、福祉用具の大手メーカーです。条件面と将来性を考えて、介護テック企業を選びました。
Q: 退職届の提出から退職日までの流れを教えてください。
施設長に2ヶ月前に伝えました。「異業種に転職する」と話したら、「介護の仕事を捨てるのか」とかなり厳しい反応でした。でも「介護業界にはテクノロジーの面から貢献したい」と説明したら、少し理解してくれました。
退職届は理事長宛てで「一身上の都合」。引き継ぎは1ヶ月半で行いました。リーダー業務の引き継ぎが特に大変で、シフト作成のルールや、各スタッフの得意・不得意、利用者さんのケアプランの更新スケジュールなど、全て文書化しました。
Q: 転職後の待遇はどう変わりましたか?
年収は380万円から480万円に上がりました。さらに入社2年目で520万円になっています。営業のインセンティブもあるので、頑張り次第で上がる仕組みが嬉しいですね。土日祝休みで、夜勤もなし。身体的な負担は比べものにならないくらい軽くなりました。
仕事内容は、介護施設に見守りセンサーや記録ソフトを提案する営業です。現場経験があるので「この施設の課題にはこの製品が合う」という提案ができて、施設長や介護スタッフとの信頼関係も築きやすい。「介護の経験が武器になる」と実感しています。
Q: 介護職の給与に悩んでいる方にアドバイスはありますか?
介護業界の中で転職するなら、処遇改善加算の配分額を面接で確認してください。同じ介護施設でも、法人によって配分のやり方が全然違います。「加算額を全額職員に還元している」法人を選ぶだけでも年収は変わります。
異業種に出るなら、介護経験を「スキル」に翻訳する練習をしてください。介護の仕事で身につく能力は、実は一般企業でもかなり評価されます。特に介護テック、福祉用具、人材紹介、研修会社などは、介護現場の経験を持つ人材を求めています。
「介護が好きだから給料は我慢する」という時代ではありません。好きな仕事をしながら、適正な報酬を得る道を探してほしいです。