• 名前:井上 拓也(仮名)
  • 年齢:29歳
  • 経験年数:6年
  • 勤務先:銀行(支店勤務、渉外担当)

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Q: どのような人間関係のトラブルがありましたか?

支店長との関係です。5年目のときに赴任してきた新しい支店長が、とにかく数字に厳しい人でした。毎朝の朝礼で前日の実績を読み上げ、未達の担当者を名指しで叱責。「お前の数字が支店の足を引っ張ってる」「やる気がないなら辞めろ」。これが毎日です。

渉外担当なので、融資、投信、保険、クレジットカードなど複数のノルマを同時に追いかけます。融資を伸ばしていても投信が未達だと怒られる。全項目達成なんて現実的に無理なのに。

Q: 他の行員はどう対応していましたか?

支店全体が萎縮していました。支店長が来てから半年で2人が異動願いを出し、1人は休職。でも「異動願いを出した奴は出世できない」という暗黙のルールがあり、みんな我慢していました。

副支店長に相談しましたが、「支店長のやり方に従うしかない」と。本部の人事に相談するという選択肢もありましたが、「チクった」と思われたら支店にいられなくなるので踏み切れませんでした。

Q: 退職を決断したきっかけは何でしたか?

6年目の夏、投信の販売キャンペーンで未達だった月に、支店長に個室に呼ばれて2時間説教されました。「お前は銀行員に向いていない」「親に申し訳ないと思わないのか」。人格否定の域です。

その夜、帰宅して風呂に入りながら涙が止まらなくなりました。「もうここにいる必要はない」と、冷静に結論が出ました。感情的な衝動ではなく、理性的な判断です。

翌週から密かに転職活動を開始し、2ヶ月後に信用金庫の法人融資部門から内定をもらいました。

Q: 退職届はどのように提出しましたか?

副支店長に口頭で退職の意思を伝え、副支店長経由で支店長に報告してもらいました。直接話すと感情的になりそうだったので。

退職届は頭取宛て、理由は「一身上の都合により」。人事部に郵送で提出しました。支店長からの引き止めはありませんでした。「そうか」の一言だけ。むしろ清々しかったです。

退職日は2ヶ月後。融資案件の引き継ぎに時間が必要だったので、余裕を持たせました。

Q: 引き継ぎで特に気をつけたことは?

融資先の引き継ぎが最重要です。担当していた法人約50社の融資状況、決算内容の要点、社長の性格や経営方針などをまとめたファイルを作成。後任の渉外担当と1ヶ月間、同行訪問を行いました。

投信・保険の顧客リストは支店に残るシステムデータなので、特別な引き継ぎは不要。ただ、「この顧客はリスク許容度が低いので無理な提案をしないように」といった注意事項はメモで残しました。

行内のキャッシュカードや印鑑、鍵類は最終日に総務へ返却。個人情報に関する誓約書にサインして退職完了です。

Q: パワハラに悩む銀行員にメッセージをお願いします。

銀行の支店は閉じた空間で、支店長の権限が絶対的です。「異動すれば変わる」という期待もありますが、次の支店長がマシとは限りません。

転職市場では銀行員の評価は高いです。特に法人融資や審査の経験がある人は、信金・信組はもちろん、リース会社やコンサルからも引き合いがあります。「金融機関を辞めたら終わり」ではない。むしろ選択肢は広がります。

退職届は感情を入れず事務的に。パワハラの記録(日時、発言内容、目撃者)は残しておくと、万一の際の証拠になります。