- 名前:田村 直樹(仮名)
- 年齢:33歳
- 経験年数:9年
- 勤務先:銀行(支店勤務、法人融資担当)
- 家族構成:妻、子ども2人(6歳・3歳)
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Q: 退職を考えた理由を教えてください。
銀行に入行して9年、複数の支店を経験しました。銀行員の転勤は3〜5年サイクルで、拒否権はありません。これまでは自宅から通える範囲の支店だったので問題ありませんでしたが、9年目の春に県外への転勤辞令が出ました。
上の子が翌春に小学校入学を控えているタイミング。妻もパートで働いていて、引っ越しとなると妻の仕事も子どもの環境も全て変わる。単身赴任という選択肢もありましたが、3歳と6歳の子どもから離れる決断はできませんでした。
Q: 銀行に異動の相談はしましたか?
人事部に「家庭の事情で県外転勤が困難」と相談しました。しかし、「地域限定職」への転換を提案されたものの、限定職は昇進ルートが大幅に制限され、年収も2割ほど下がるとのこと。
支店長にも相談しましたが、「転勤は銀行員の宿命。受け入れるか辞めるかの二択だ」と言われました。厳しいですが、これが銀行の現実です。
妻と何度も話し合った結果、「家族が一緒にいることを最優先にする」という結論に。退職を決断しました。
Q: 退職届はどのように提出しましたか?
支店長に口頭で退職の意思を伝えた後、頭取宛ての退職届を人事部に提出しました。理由は「一身上の都合により」。転勤拒否が理由であることは口頭では伝えましたが、退職届には書きませんでした。
退職日は転勤辞令の発効日の前日に設定。約2ヶ月の猶予がありました。この間に引き継ぎと転職活動を並行して進めました。
Q: 融資案件の引き継ぎはどう進めましたか?
法人融資の担当先約40社の引き継ぎです。各社の融資残高、直近の決算内容、メインバンクとしてのポジション、社長との関係性など、引き継ぎ資料はA4で100ページ以上になりました。
特に重要なのは進行中の融資案件。設備投資の融資を進めている取引先が3社あり、稟議の進捗状況を後任に細かく引き継ぎました。社長への「担当変更のご挨拶」も後任と同行して行いました。
「あの森さんがいたから、うちはこの銀行と取引を続けていたのに」と言われた取引先もあり、申し訳ない気持ちになりましたが、後任を信頼していただけるよう丁寧に引き継ぎました。
Q: 退職後の転職先はどう決めましたか?
「地元で転勤なし」が絶対条件。銀行員の転職先として、信用金庫、地元企業の経理部門、会計事務所などを検討しました。
最終的に、地元の信用金庫に転職。法人融資の経験がそのまま活かせますし、信金は基本的に転勤があっても同一市内。年収は前職の480万から420万に下がりましたが、家族と毎日一緒にいられる生活に変えた代償としては安いものです。
Q: 退職後の生活はどうですか?
上の子の小学校入学に立ち会い、運動会にも参加できました。下の子の保育園の送り迎えも自分ができる日が増えた。妻も「やっと普通の家庭になった」と喜んでいます。
信金の仕事は地銀と似ていますが、地域密着度が高く、取引先との距離が近い。「お客様の顔が見える仕事」がしたかった自分には合っています。
Q: 転勤と家庭の両立に悩んでいる銀行員にメッセージをお願いします。
転勤は金融機関勤務にとって避けられない問題です。でも、「金融機関に残ること」が人生の最優先事項ではないはず。
地域限定職への転換、信金・信組への転職、異業種への挑戦。選択肢は複数あります。大切なのは、家族としっかり話し合って優先順位を決めること。
退職届を出すなら、融資案件の引き継ぎを最優先に。金融業界の世界は狭いので、円満退職しておけば、将来どこかでつながることもあります。