座談会のテーマと出席者
保育士の給与と労働環境について、3人のリアルな声を聞きました。
出席者 - **Eさん(27歳・私立認可保育園勤務5年)** 手取り月給18.5万円 - **Fさん(31歳・法人内複数園管理職候補)** 手取り月給20.3万円 - **Gさん(24歳・認可保育所勤務2年)** 手取り月給17.2万円
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第1部:給与の実態
進行役「まず、毎月の手取り給与を教えてもらえますか?」
Eさん「18.5万円ですね。基本給17万円、保育手当5,000円、処遇改善加算の月額分が約8,000円で。手取りでこれです。ボーナスは年2回で、1ヶ月分ずつ。年収換算で250万円程度」
Fさん「私は20.3万円。5年目で一度昇給して基本給が19万円になって、主任候補だからプラス手当。それでもこの額です。年収は330万円くらいで、年一回だけ夏にボーナスが少し多い」
Gさん「新卒2年目で17.2万円。基本給16.5万円。同期で銀行に進んだ子は、手取りが23万円以上だって。同じ四大卒なのに、この差。正直、毎月お金のことで頭がいっぱいです」
進行役「3人とも、共通点としては、どれだけ経験を積んでも給与が低いということですね」
Fさん「そうです。管理職候補になっても20万円ちょっと。園長候補のEさん(別の方)の話を聞いたら、手取りで28万円だって。『えっ、園長でそれ?』って。民間企業では考えられないレベルです」
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第2部:労働環境の厳しさ
進行役「労働時間はどうですか?」
Eさん「朝7時半に出勤、夜7時に帰宅。その日の保育日誌、月案、連絡帳の記入が毎晩1時間〜1時間半あります。自宅でもやってます。月案とか指導案を作るのに、休日を使うこともしょっちゅう」
Gさん「私は朝7時出勤、帰りは早めだと6時。でも月末は連絡帳で2時間。行事の前は、飾り付けを手作りするから、土日の準備が必須。正月、GW、盆も、行事準備で出勤することあります。有給休暇も『行事を避けて』ということで、実質取りにくい」
Fさん「5年もやってるから、業務量がいっぱい。午前中の保育業務、午後の会議・研修、子どもが帰った後に書類。帰宅するのは大体7時半。で、家に帰ってから家事をして寝るまで、ほぼ息をついていない。寝不足が続くから、土日は丸一日寝ていることもあります」
進行役「有給休暇の取得状況は?」
Eさん「年20日の有給がありますが、実際に取得できるのは3日くらい。『この日は行事準備があるから』『この時期は人が足りないから』と言われて。会社では『有給は権利』なのに、保育業界では『贅沢』という空気があります」
Fさん「育児休暇も『取るなら人数の都合をつけてくれ』という感じで。同期が育休を取った時、『大変だ』と何度も聞かされました。その同期も育休明けに復職したんですが、『やっぱり保育園は大変だから』ということで、1年で退職してしまった」
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第3部:給与に見合わない専門性
進行役「保育士には、国家資格が必要ですね」
Gさん「そうです。4年制大学で勉強して、国家試験に合格して。でも給与は、高卒で入った企業より低い。理不尽です。栄養士さんや保健師さんと同等かそれ以上の専門知識があるのに、なぜこんなに低いのか」
Eさん「処遇改善加算という制度があるんですが、月5,000〜10,000円程度です。政府が『保育士の給与を上げよう』と言いながら、実際の上げ幅がこんなもん。実感としては『チャリティを受けている』という感覚。生活改善には全く繋がらない」
Fさん「加算を受け取るには、キャリアアップ研修を受けないといけないんです。その研修は勤務時間中には受けられず、土日や夜間。つまり、給与を上げるために、さらに時間を取られる。結局、人生全部が保育業務に吸収される」
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第4部:人間関係のストレス
進行役「給与・労働時間に加えて、人間関係はどうですか?」
Eさん「園長の一言で雰囲気が変わります。前園長は若くて開放的でしたが、新園長になったら急に厳しくなった。『昔はこうだった』『ここの園はルールを守る文化』と。息苦しくなりました」
Gさん「先輩保育士との関係性が大変です。新卒の時は教えてもらいたいことが山ほどあるのに、先輩は忙しいから『見て覚えて』というスタンス。わからないことを聞いたら『そんなこともわからないの?』という返し方。年数が経つと、その先輩が新人に厳しくする構図を見ていて、『あ、これが文化か』と気づきました」
Fさん「特に、保護者からのクレームが精神的にくる。子どもが『ママ以外に抱っこされたくない』と言われて、保護者から『かわいそうだから抱っこしてくれ』と。あるいは『友達をたたいた』と報告したら、『うちの子がそんなことするわけない。検査に出した』と。子どもの発達を理解していない保護者との対応が、毎日疲労を生みます」
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第5部:辞めることについて
進行役「今、辞めたいと思いますか?」
Eさん「思います。毎日『今月が最後の給料だったら』と考えながら仕事をしています。給与が30万円あれば、『やっぱりこの仕事、続けよう』となるはずなんです。でも18万円では、子どもへの愛情と現実の生活が釣り合わない」
Gさん「辞めたいというより、『このまま続けていいのか』という不安があります。25歳で年収250万円台に乗っかると、35歳でも45歳でも変わらない可能性が高い。キャリアとしての選択肢が狭まる。今なら別の業界に転職できるから、動くなら今かな」
Fさん「一番悔しいのは、『好きなことをしているから給与は安い』という社会的な価値判断です。でも仕事は仕事。給与が安ければ、それは『その仕事の社会的評価』です。だから、その低い評価に自分の人生を合わせるのか、別の選択肢を探すのか…5年やって、答えが『別の選択肢』になってしまった」
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総括と提言
3人の声には、共通のメッセージが込められています。「保育士の給与が低いのは、その職業の性質や個人の努力不足ではなく、業界全体と社会的な構造的問題である」ということです。処遇改善加算も、一時的な政策効果であり、根本的な解決ではありません。
保育業界に人材が定着しないのは、当然の結果と言えるでしょう。