座談会のテーマと出席者

私立保育園と公立保育所の両方を経験した3人が、職場環境の違いと「辞めやすさ」について語ります。

出席者 - **Pさん(33歳)** 私立7年 → 公立5年 - **Qさん(28歳)** 公立3年 → 私立4年 - **Rさん(40歳)** 私立10年 → 公立10年

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給与の違い

進行役「私立と公立で、給与にどれだけ差がありますか?」

Pさん「私立にいた時は、手取り18万円程度。公立に移った時点で、手取り25万円。給与だけで7万円、月給が違いました。年間で84万円の差。その後、公立での昇給で、今は28万円。公立の給与体系は、年1回確実に昇給します」

Qさん「私の場合、公立から私立に移ったので、逆です。公立の最後は25万円。私立に移ったら20万円になりました。ただ、私立は『実績給』という制度があって、保護者満足度とか行事の成功度とかで、ボーナスが増えることもあります。実績がいい年は、公立時代より手取りが多くなります」

Rさん「20年で比較すると、公立の方が圧倒的に給与が良いです。私立では、手取り20万円台が上限。公立では、昇進して今は手取り32万円。この差が20年続くと、生涯賃金で1,000万円以上の違いになります」

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雇用契約と身分の安定性

進行役「雇用形態はどう違いますか?」

Pさん「私立は、『有期雇用契約』が多いです。1年契約で、毎年更新。園の経営が悪くなったら、契約更新されないリスクがあります。公立は、『公務員』ですから、身分が安定しています。首になることはありません」

Qさん「公立は試験を受けて採用されるので、身分は強い。ただし、異動が決まったら従うしかない。転勤を拒否できません。私立は『この園で働きたい』という意志で選べます」

Rさん「公立は、給与と身分が安定する代わりに、人事異動の自由度がない。私立は、給与は低いけど、『この園で働く』という選択肢がある。どちらかというと、『給与 vs 自由度』のトレードオフですね」

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人間関係と職場文化

進行役「職場の人間関係はどう違いますか?」

Pさん「私立は、『園長の方針が絶対』という傾向があります。園長が独断的だと、職場全体が息苦しくなる。公立は、『行政の方針』が基準だから、園長の権限が限定されている。その分、人間関係が『より公平』だと感じます」

Qさん「私立から公立に行くと、『なんて民主的なんだ』と驚きます。公立は職員会議で、全員が意見を言える。私立は園長の一言で決まります。ただ、その『民主的さ』が逆に『意思決定が遅い』という問題になることもあります」

Rさん「私立は、『家族的』という名目で、プライベートと仕事の境界が曖昧になります。休日も園のイベント手伝ったり、園長の悩みを聞かされたり。公立は、『職員は職員』という距離感がある。その分、職場の人間関係は淡白かもしれませんが、心の負担は少ない」

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労働条件と福利厚生

進行役「労働条件、特に有給休暇の取得状況は?」

Pさん「私立では、有給休暇を取りにくい空気があります。『業務が忙しい』『人が足りない』という理由で、実質的に取得できません。年20日のうち、実際に取得できるのは2、3日。公立では、『有給は権利』という認識があって、年度の最初に『有給取得計画』を立てます。実際に、ほぼ全員が有給を取得しています」

Qさん「私立に移った理由の一つが、『公立の有給制度の手厚さ』を経験したから。公立では『月1回は連続3日取得しろ』という方針もありました。それが私立だと『申し訳ない』という空気が出て、『月1回取るなんて』と言われます」

Rさん「福利厚生も、公立の方が充実しています。退職金、厚生年金、健康保険。すべて保障されています。私立は、『最低限の法定福利厚生』に加えて、園独自の福利厚生があったりなかったり。不安定さが残ります」

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保護者対応のスタンス

進行役「保護者対応の難しさは、私立と公立で違いますか?」

Pさん「私立は『顧客』という意識があります。保護者の満足度が、園の経営に直結するから。だから、保護者からのクレームに対して、『園側が譲歩する』傾向があります。公立は『市民』という意識で、『保育方針に基づいて対応する』というスタンスがあります。時には、保護者の要望に『それは対応できません』と言えます」

Qさん「その代わり、公立は『透明性』が高いです。行政と保護者の関係が制度化されているから、『勝手な対応』ができません。私立は、対応が園長の判断次第。合理的ならいいですが、不合理な対応もあります」

Rさん「保護者対応の難しさは、『環境に依存する』というのが正直なところ。私立でも、園長がしっかりしていて、保護者対応の方針が明確な園なら、楽です。公立でも、『地域の有力者が保護者』という場合、対応が複雑になります」

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辞めやすさについて

進行役「では、最後の質問。『辞めやすい』のは、私立と公立のどちらですか?」

Pさん「私個人は、公立の方が『辞めやすい』と思います。理由は、『身分が安定しているから、辞める必要がない』。私立で『辞めたい』という人は多いです。でも、『給与が低い』『身分が不安定』という現実があるから、辞めるしかない状況も多い。つまり、『やむを得ず辞める』のが私立」

Qさん「公立は給与や身分が安定しているから、『この仕事を続けたい人』が続けます。逆に、『辞めたくなる理由』が、給与や安定性ではなく、『仕事内容への疑問』『配置異動への不満』など、内的な理由になります。そういう意味では、『考えた上で辞める』のが公立」

Rさん「20年経って思うのは、『職業としての保育士を続けるなら公立、働く環境を自分で選びたいなら私立』ということ。給与や安定性を優先するなら公立。人間関係や職場環境を優先するなら、『いい私立を見つける』ことが大事。ただし、『いい私立』を見つけるのは難しいです」

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総括

私立保育園と公立保育所には、明確な違いがあります。給与、労働条件、職場文化。「どちらが向いているのか」は、個人の優先順位によって異なります。ただし、いずれにせよ、「人間関係が良い」「やりがいを感じられる」という条件は、給与や安定性と同じくらい重要です。