座談会のテーマと出席者

保育士からのキャリアチェンジについて、4人が実際の経験を語ります。

出席者 - **Jさん(28歳)** 保育士5年 → 企業保育施設の園長 → 現在:子ども向け教育企業の運営マネージャー - **Kさん(32歳)** 保育士8年 → 異業種転職(行政職員) - **Lさん(26歳)** 保育士3年 → 大学院進学 → 教育研究員 - **Mさん(38歳)** 保育士15年 → 保育関連企業の営業・講師のフリーランス

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第1部:転職後のキャリアパスと給与

進行役「転職後、給与がどう変わったか教えてもらえますか?」

Jさん「保育士時代は年収290万円。転職先の子ども向け教育企業は、最初は年収380万円でした。現在、運営マネージャーになって、年収530万円。4年で給与が倍近くになりました」

Kさん「保育士時代は年収280万円。転職して行政職員(保育課)になったら、年収420万円。ボーナスも安定していて、生活が一気に楽になりました」

Lさん「進学してまだ学生なので、給与はゼロです。(笑)。でも親から学費を援助してもらう代わりに、教育研究員のアルバイトをしていて、月10万円程度。研究に費やす時間が減りますが、生活費の足しになっています」

Mさん「フリーランスなので、月ごとに変動します。多い月で50万円、少ない月で15万円。年収としては300万円〜400万円の間をウロウロしています。保育士時代より多いときもあるし、少ないときもある。ただ、時間の融通が利くので、人生全体のバランスは改善されました」

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第2部:保育スキルの活かし方

進行役「保育士の経験・スキルが、新しい職場でどう評価されましたか?」

Jさん「子ども向け教育企業では、『子どもの発達理解』と『保護者対応スキル』が高く評価されました。新入社員の中でも、『この人、子ども関連の実務経験がある』というのは大きなアドバンテージ。営業や企画の仕事でも、『子どもはこう考える』『保護者はこんなニーズがある』という視点が活きています」

Kさん「行政職員として保育課に配属された時も、『現場経験がある』というのは強みでした。『保育園から上がってくる問い合わせや課題に、深い理解がある』と上司に評価されて、ポジション的には『保育園との窓口』として活躍できました。異業種転職ですが、経験が完全に活かせました」

Lさん「大学院で『子どもの発達と学習』を研究しているんですが、保育士として3年間の子ども観察経験が、研究の根底にあります。『子どもはこう動く』『この段階ではこの支援が必要』という現場感覚がないと、研究は机上の空論になってしまう。現場経験あるから、論文も具体的で説得力があるって言われます」

Mさん「フリーランスとしては、保育士資格そのものが営業ツールになります。『保育士15年の経験』という肩書きで、保育園からの研修依頼が来たり、セミナー講師のオファーが来たりします。もし保育士資格がなかったら、フリーランスの営業は難しかっただろう」

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第3部:辞めて良かったことと悪かったこと

進行役「辞めて良かったことは?」

Jさん「やっぱり給与ですね。保育士時代は『月末いくら残る?』という計算をしていたんですが、今は『どう貯蓄しよう?』という計算に変わった。人生が前向きになりました」

Kさん「休日。保育士時代は、土日も行事準備や月案作成。でも今は土日は完全に休み。子どもとの時間、自分の趣味の時間がある。精神的に楽になりました」

Lさん「キャリアの選択肢が広がったこと。保育一筋だったら、30歳までに『このキャリアでいいのか』という迷いが出ていたと思う。大学院に進学して、研究という道を見つけたから、人生の満足度が上がっている」

Mさん「自分のペースで仕事ができること。保育園では『園のペース』『園長の方針』という枠があったんですが、フリーランスは自分で全部決める。自由と責任がセットですが、その感覚が好きです」

進行役「反対に、『辞めて残念だった』ことは?」

Jさん「子どもと直接関わる時間が減ったことですね。やっぱり、保育現場が好きだったから。でも給与や待遇を改善したら、『子どもと関わる仕事』という目標との両立が難しくなった。その選択でいいのかな、という迷いは今でもあります」

Kさん「行政の仕事は、保育園に指摘や課題を与える立場になるんです。現場にいた時は『行政は何もわかっていない』と感じていましたが、行政側になると『保育園も行政の指示を聞いてくれない』と感じる。両サイドの溝が見えて、複雑になりました」

Lさん「大学院は、実務から離れているんです。保育現場の新しい実践や課題が、学べない。研究と実践の往復ができたら理想的なんですが、今は研究に集中している期間」

Mさん「フリーランスは、『季節変動』があります。夏休みとか、保育園が予算不足の時期は仕事が減る。安定性では、正社員の方が格段に上。その代わり、自由を取りました」

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第4部:保育士資格の価値

進行役「保育士資格って、どう思いますか?」

Kさん「資格の価値は、『使い方次第』だと感じます。保育園でしか使えないと思ったら、選択肢は狭い。でも『子ども関連のあらゆる業界で使える』と思ったら、可能性は無限に広がります」

Lさん「保育士資格を『プロの証』として見ると、それは一生の資産です。例え保育現場を離れても、『この人は子どもに関わるプロの訓練を受けている』という証拠になる。その信頼度が、異業種でのキャリアを支えています」

Mさん「15年の経験がベース。フリーランスで成り立っているのは、その経験があるから。資格だけあっても駄目で、『資格 × 実務経験』で初めて市場価値になる」

Jさん「保育士資格は、『公式な子ども理解のプロ』として認識されます。企業側も『保育士は子どもを理解している』という先入観を持つから、採用時にアドバンテージになる。その価値を最大限活用できるなら、資格を取得した甲斐があるということ」

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第5部:保育士を辞めようとしている人へのメッセージ

Jさん「辞めることは、『逃げ』ではなく『キャリアチェンジ』です。保育から離れることで、保育が『自分の人生の一部』から『自分の武器』に変わる。その視点の転換があると、人生全体が見える」

Kさん「保育で報われなかったことが、別の業界では報われるかもしれない。『給与が安い』『労働時間が長い』『人間関係が悪い』…その不満の原因を『保育という職業』に求めるのではなく、『今いる職場』に求めてください。環境を変えたら、全部解決することもあります」

Lさん「20代は、人生の中で最も『選択肢がある時期』です。30代、40代になると、『今の仕事を続けるしかない』という選択肢の制約が増えます。『自分の人生、このままでいい?』という問い対して、『いいえ』なら、今が行動の時期です」

Mさん「保育士は素晴らしい職業です。でも『素晴らしい職業だからこそ、苦しみながら続けるべき』という圧力は、あってはいけません。保育士の資格を活かして、自分が活躍できる場所を探してください。それは保育園かもしれないし、別の場所かもしれない。その選択肢を、自由に選べる世の中になってほしい」

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総括

4人のキャリアパスは全く異なります。しかし共通点は、「保育現場を離れたことで、人生全体の選択肢が広がった」ということ。それは給与だけでなく、時間、心身の健康、やりがいのバランスを見直すきっかけになったようです。