インタビュー対象者プロフィール

  • 名前: 中川 理恵さん(仮名)
  • 年齢: 32歳
  • 経験年数: 10年(私立認可保育園に9年勤務後、転職)
  • 前職: 社会福祉法人運営の私立認可保育園の主任保育士
  • 現職: 子ども向け教育サービス企業の教室運営マネージャー

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Q: 待遇面でどのような不満がありましたか?

入職10年目、主任保育士になっても手取りは19万円でした。基本給が18万円台で、主任手当が月5,000円。処遇改善加算は年2回の一時金で支給されていましたが、合計でも年15万円程度。年収は額面で320万円くらいです。

周囲の同世代は結婚してマイホームを建てたり、海外旅行に行ったりしているのに、私は実家暮らしで貯金もほとんどできない。「保育士って、こんなに報われない仕事なんだ」と感じることが増えました。

Q: 昇給の見込みはなかったのですか?

法人に確認したら、主任の上は副園長で、月給の差は1万円程度。園長になっても年収400万円くらい。しかも園長のポストは空きがない。「定年まであと30年、このままの給与で?」と考えると、暗い気持ちになりました。

処遇改善等加算IIでキャリアアップ研修を受ければ月5,000円上がるんですが、研修の時間確保も大変ですし、5,000円では生活は変わりません。

Q: 保育士を辞めることへの葛藤はありましたか?

ものすごくありました。子どもが好きで保育士になったし、10年間で培った経験やスキルを捨てるのかと。卒園児が小学校の帰りに「先生ー!」と手を振ってくれるのを見ると、「やっぱりこの仕事は素晴らしい」と思うんです。

でも、好きだからといって経済的に苦しいまま続けるのは違うと思いました。30歳を過ぎて「このままでは結婚も難しい、老後も不安」と現実を見たとき、行動するなら今だと。

Q: 転職先はどのように見つけましたか?

一般向けの転職エージェントに登録しました。「子どもに関わる仕事で、かつ保育園より待遇が良い」という条件で探してもらいました。

紹介されたのは、幼児教室の運営企業、児童発達支援事業所、子ども向けプログラミング教室の運営会社など。面接を受けて、子ども向け教育サービス企業の教室運営マネージャーに内定をもらいました。

保育園での「主任としてのマネジメント経験」「保護者対応の経験」「子どもの発達に関する専門知識」が評価されました。

Q: 退職届の提出から退職までの流れを教えてください。

年度末退職を前提に、11月に園長に伝えました。「保育士を辞めて民間企業に転職する」と話したら、園長はかなりショックを受けていました。「主任に辞められると困る」「もう少し給料を上げられないか法人に掛け合う」と。

でも「掛け合う」と言われても、法人の賃金テーブルが変わらない限り意味がないので、丁重にお断りしました。退職届は12月に園長宛てで「一身上の都合」として提出。引き継ぎは3ヶ月かけて丁寧に行いました。主任業務(シフト管理、行事企画、新人指導)のマニュアルを作成して、後任の副主任に渡しました。

Q: 転職後の待遇はどう変わりましたか?

年収は320万円から450万円に上がりました。基本給が25万円で、業績賞与もあります。土日はほぼ休みで、残業は月15時間程度。持ち帰り仕事はゼロです。

仕事は複数の教室の運営管理で、スタッフのマネジメントや保護者対応、カリキュラムの改善が中心。保育園での経験がそのまま活きています。「保育士の経験って、こんなに市場価値があったんだ」と驚きました。

Q: 保育士の待遇に悩んでいる方にアドバイスはありますか?

まず、「保育士=保育園で働くこと」だけではないと知ってほしいです。保育士の資格と経験を活かせる仕事は、民間企業にもたくさんあります。教育サービス、児童福祉、子育て支援、ベビーシッター派遣会社の管理職など。

転職する気がなくても、転職サイトに登録して自分の市場価値を確認してみてください。「保育士10年の経験」は、思っている以上に評価されます。その上で、今の園に残るか、転職するかを判断すればいい。

「好きを仕事にしているから我慢する」のではなく、「好きを活かして適正な報酬を得る」方法を探してほしいです。