体験者プロフィール

  • Hさん(29歳)
  • 経験年数:7年(最初の2園に計7年勤務)
  • 前職:私立認可保育園の担任保育士
  • 現職:教育系企業のスタッフトレーナー

---

第1章:人間関係が悪化するきっかけ

新卒で入職した1園目は、実は人間関係が悪くありませんでした。園長がサラリーマン出身で、「保育園も企業だから、人間関係のルールを大事にしよう」というスタンス。報告・連絡・相談の仕組みが整っていて、困ったことがあれば園長に相談できる雰囲気でした。

3年目の異動が、転機になりました。新しい園に異動になった時点で、雰囲気が全く違うことに気づきました。

その園の特徴は、「伝統を大事にする」「先輩のやり方が絶対」という文化。主任の高橋先生が30年近く同じ園にいて、その人のやり方が園のルール化していました。

---

第2章:新人指導という名の圧力

異動初日。私は「前の園でこう習いました」と説明しながら仕事を始めました。すると、高橋先生から言われたのが、「ここはここ。あの園のやり方は通用しません」ということ。

最初は「あ、各園のやり方は違うんだ」と理解しようとしました。しかし、その後、毎日が指摘の連続でした。

「連絡帳の書き方が違う」「お便りのフォーマットが違う」「子どもとの接し方が優しすぎる」「月案はこのテンプレートを使え」「自分の考えを入れるな」。

正直、窒息する思いがしました。前の園では「保育者の個性を活かす」という方針だったのに、ここは「個性を消す」という方針。毎日、何かを消されている感覚でした。

---

第3章:相談できない環境

大事だったのは、「相談できない環境」だったこと。困ったことがあっても、高橋先生以外に相談する先がない。園長は事務的で、保育の現場には来ない。副園長は高橋先生の指示を伝える人でしかない。

「高橋先生のやり方に従わない」=「この園のルールに従わない」=「協調性がない」という図式が成り立っていました。

4年目の夏、限界が来ました。連絡帳を書いているときに、高橋先生が私の肩越しに「ここ、こう書かないと保護者には伝わらない」と言いながら、私が書いた部分を消して、自分の書き方に直してしまったんです。

その時、「あ、この人は私を信頼していないんだ」と感じました。同時に、「もう3年もこの人のやり方に従っているのに、まだ信頼されていない」という絶望感がありました。

---

第4章:身体に出た不調

その後、身体に症状が出始めました。朝、目覚めると心がソワソワしている。「また何か言われるんじゃないか」という不安が消えない。夜、寝られない。土日も仕事のことで頭がいっぱい。

医者に行ったら、「これは典型的なストレス症状。職場に戻ったら悪化する」と言われました。その時初めて、「あ、自分は精神的に追い詰められているんだ」と気づきました。

4年目の秋、短期入院の治療を受けました。その間に、「この仕事を続けるか」という決断を迫られました。

---

第5章:退職を決めるプロセス

入院中に心理士さんと面談したとき、「同じ職場に戻るのは難しいと思う」と言われました。「環境が変わらない限り、症状は改善しない」と。

  1. 1 同じ法人内で別の園に異動する
  2. 2 別の法人に転職する
  3. 3 保育士を辞める

同じ法人内の異動は、「同じシステムの下で働く」という意味で、根本解決にならないと思いました。別の法人に転職するのも、また新しい園長・主任の人間関係を構築する必要があって、同じリスクを背負うことになる。

だから、思い切って「保育士以外の仕事を探す」という選択をしました。

---

第6章:退職届の提出

入院から復帰した時点で、園長に「退職したい」と伝えました。園長は驚いていました。「どうしたんですか?いきなり」と。

「医者から『この環境での仕事は難しい』と指導されました。申し訳ございませんが、今月末での退職を願います」と話しました。

園長は「もう一度、別の園への異動を」と勧めてくれましたが、「ありがたいですが、保育以外の選択肢を探したいので」と丁重にお断りしました。

退職届は正式に11月に提出。3月末での退職予定でしたが、心理士さんのアドバイスで「長く在籍するとストレスが高まる」と言われたので、園長に相談して12月末での退職に変更してもらいました。

---

第7章:退職後のキャリア

現在は、教育系企業で新入社員研修を担当するスタッフトレーナーをしています。年収は400万円。仕事の内容は、新人の指導と育成。

選びました。「保育士のスキルを活かしながら、人間関係のストレスが少ない環境」を。この会社には「フィードバック文化」があります。新人が困っていたら、複数の先輩が関わる。一人の人に支配されない仕組みが、制度として組み込まれています。

新人時代の悪い経験があるから、「今の職場の良さ」が認識できています。

---

最後に

人間関係が悪い職場を離れることは、「逃げ」ではなく「自衛」です。特に心身が不調になっているのなら、それは黄信号。保育士を続けたいなら、別の園での再スタート。保育以外の道を歩みたいなら、スキルを活かせる別業種。

どちらを選んでも、「今の環境から逃げる」ことが、まず最初のステップです。