退職を決めた4人の背景
本座談会では、保育士経験3年〜15年の4名に、「退職して良かったこと」「後悔したこと」「今のキャリア」について語ってもらいました。
出席者 - **Aさん(29歳・元認可保育園勤務7年)** → 現在:パート転職 - **Bさん(34歳・元私立保育園勤務11年)** → 現在:別業種管理職 - **Cさん(26歳・元認可保育所勤務3年)** → 現在:大学院進学 - **Dさん(41歳・元法人内複数保育園勤務15年)** → 現在:フリーランス講師
---
第1部:退職を決めた理由
Aさん「毎月の給与明細を見るたび、がっくり来ていました。時給に換算したら最低賃金と変わらない。子どもは好きですが、好きだけでは食べていけない。7年続けても基本給は18万円のままで、昇給の見込みが全くありませんでした」
Bさん「私は給与より人間関係ですね。園長が高圧的で、こちらの提案は一切聞かない。新人の指導も徹底されていないから、毎年教え直し。11年続けて、『これはもう変わらない』と諦めました」
Cさん「正直、思い描いていた『やりがい満点の保育』と現実のギャップが大きかった。年間行事、書類作成、保護者対応に追われて、子どもと関わる時間より事務作業が多い。そもそも、新卒で保育園に入職したんですが、社会経験を積まずに給与が低い仕事を続けるのは不安でした」
Dさん「15年やりました。子どもも好きだし、やりがいもあった。でも、自分がバーンアウトしていることに気づきました。毎晩眠れない、朝起きられない。医者に『保育士の仕事は辞めるべき』と言われて、初めて深刻さが分かりました」
---
第2部:退職届の提出〜退職まで
Aさん「園長に直接伝えるのが怖くて、1ヶ月悩みました。でも『退職届を出します』と言った瞬間、肩の荷が下りました。最初は『本当に辞めるの?』と何度も聞かれましたが、退職届を正式に提出したら、園長の態度も変わりました。『今後の対応は法務部から』という感じで。逆に気楽になったくらい」
Bさん「私は法人のコンプライアンス相談窓口に先に相談しました。園長に直接言ったら揉めると思ったので。相談窓口からアドバイスもらって、その上で園長に伝えました。本当にメンタルがギリギリだったので、退職届を出した日は泣きました。泣きながら、『やっと呼吸ができる』という感覚でした」
Cさん「新卒だったので、3年で辞めるのは申し訳ないと思いました。でも主任の先生が『3年は業界では普通。気にするな』と言ってくれて。9月末での退職を予定して、早めに園長に伝えました。引き継ぎは充実させました。自分の机の中身、担当している子どもたちの成長記録、月案の作成方法。『この子たちが困らないように』という思いで」
Dさん「15年いたから、辞めるのに罪悪感がありました。『これだけいたら、辞めるのは不義理』みたいな感覚。でも冷静に考えたら、自分が倒れたら子どもたちにも迷惑をかける。『自分の人生を優先してもいい』と決めて、退職届を出しました。法人は条件に応じて、出向で別の園の非常勤講師の道も示してくれたので、その選択肢は感謝しています」
---
第3部:退職後の人生と後悔の有無
Aさん「今はパート保育士と、副業で家庭教育のコンサルをしています。パート保育士は時給1,500円で、フルタイム勤務で月25万円。家庭教育の仕事は月10万円程度。合わせて35万円くらい。あ、フルタイムより稼いでいる。それに時間に余裕があるから、精神的には本当に楽になりました。辞めて良かった。後悔は全くありませんね」
Bさん「転職先は教育系の企業。仕事内容はカリキュラム開発と教室の運営管理。基本給30万円、ボーナス有り、年収500万円越え。保育士の経験が評価されました。今の会社では『子どもに関わるプロ』として扱ってもらえます。給与も待遇も全く違う。もっと早く転職すれば良かった」
Cさん「大学院に進学して、教育心理学を専攻しています。保育士の経験があるから、理論と実践を結びつけて学べています。今は学生ですが、卒業後は教育系の研究機関か、保育園のスーパーバイザー的な立場を目指しています。保育現場と距離を置くことで、『保育の価値』が客観的に見えるようになりました」
Dさん「今は保育士資格や教員免許を持つ人向けの講師をしています。オンラインで保育の実践研修を教えたり、保育園からの外部研修の依頼に応じたり。月15万円程度の収入ですが、朝8時から夜9時まで保育園にいたときの拘束時間から見たら、時給は倍以上。心身ともに健康になりました。医者も『この仕事は向いている』と言ってくれています」
---
第4部:保育士を辞めようか迷っている人へのメッセージ
Aさん「保育士の資格って、すごく価値があるんです。パート、非常勤、フリーランス、コンサルティング…使い方がいっぱいある。『フルタイム正社員で保育園に勤務すること』だけが選択肢じゃないんです。辞めたら終わりではなく、新しいキャリアの始まり。怖いなら、まずパートで試してみるのも良い」
Bさん「好きな仕事だからこそ、環境が悪いのがもったいなく感じます。同じ保育を続けたいなら、環境を変えることを検討してください。別の園に転園する、企業主導保育施設に転職する、フリーランスになる。『保育士を辞める』ではなく、『環境を変える』という選択肢もある。自分の幸福度を最優先に」
Cさん「若いうちに辞めて、別の道を開いたことは後悔していません。むしろ、もっと早く気づけば良かったくらい。保育への『当たり前』が通用しない環境に身を置くと、見える景色が変わります。そこから『本当に自分がしたいこと』が見つかることもあります」
Dさん「15年保育士をやったから言えることですが、保育士の経験は人生の財産です。辞めたって、その経験は取られない。むしろ、別の仕事や学びの中で、『あのとき学んだことが活きている』と気づくことが多い。だから、退職を決めたら、自分の選択を信じて。その先には、きっと別の可能性が待っていますよ」
---
総括
4人の共通点は、「辞めることで人生が開けた」という感覚です。保育士という職業は尊い仕事ですが、それゆえに「好きだから続けるべき」というプレッシャーがあるかもしれません。しかし、自分の人生のキャリアを最優先に考える時間があっても良いのではないでしょうか。