体験者プロフィール
- Tさん(33歳)
- 経験年数:7年(出産・育休を経て、復職後1年で退職)
- 前職:私立認可保育園の主任保育士
- 現状:育児専念中
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育休までのキャリア
私は、保育士として順調にキャリアを積んでいました。7年目で主任に昇進。給与も月20万円台となり、園内でも重要な役割を担っていました。
その後、第一子の妊娠。出産予定日の2ヶ月前に、産休に入りました。
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育休中の気づき
育休中は、14ヶ月取得しました。その間、自分の子どもと毎日一緒に過ごしました。
初めての育児は、大変でしたが、同時に「この時間、本当に大切だ」と感じていました。「初めて笑った」「初めて転がった」「初めて言葉をしゃべった」。その全てを、側で見ることができました。
一方で、仕事のことが時々頭をよぎりました。「主任の引き継ぎは大丈夫だろうか」「クラスの子たちは、元気だろうか」。ただ、「その心配より、娘との時間の方が大事」という気づきも同時にありました。
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復職前の不安
復職が近づくにつれて、不安が大きくなりました。
「朝7時に娘を保育園に預けて、夜7時に迎えに行く」という生活になります。帰宅後は、夕食、入浴、寝かしつけ。その後、家事をして寝る。娘と関わる時間は、本当に限られています。
園長に復職について相談した時、「主任として戻ってもらえると助かる」と言われました。その時点で、「あ、これは『娘との時間』と『主任業務』の両立が求められるんだ」と認識しました。
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復職後の現実
復職は4月。初日から、現実の厳しさを感じました。
主任業務は、「クラス運営」「シフト管理」「新人指導」「行事企画」。その全てが、復職初日から発生します。
一方、娘は、育休中の環境から急に変わって、保育園生活に適応するのに時間がかかりました。最初の1ヶ月、毎日泣かれました。朝、娘を預ける時に「ママ、いかないで」と泣きつかれるのは、本当に辛いものでした。
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両立の限界
5月に、初めての限界を感じました。
娘が、保育園で発熱。迎えに行った時点で、すでに夕方5時。帰宅後、翌日の主任業務の資料作成(月案改定、行事企画会議の資料)が残っていました。娘を寝かしつけた後、夜中の1時まで仕事をしていました。
翌朝、娘と一緒に7時に起床。朝食後、7時半に出勤。その日は、行事企画会議が夜7時まで続き、帰宅は8時半。娘は、すでに寝ていました。
「これ、続くんだ」という現実が、その時点で分かりました。
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育児と仕事の優先順位
6月。園長に「育児との両立が難しい」と相談しました。園長の返答は、「クラス担任への異動を提案する」でした。「主任業務を減らせば、時間に余裕ができるかも」という提案でした。
ただ、「クラス担任」であっても、「子どもを朝7時に預けて、夜7時に迎える」という構造は変わりません。むしろ、子どもの担任として、「この子の発達をしっかり見る」という責任を背負ったら、心理的負担は増すかもしれません。
その時、「あ、この問題は、配置転換では解決しない」と気づきました。
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育児と仕事についての考え
育児と仕事の両立について、「両立できる」と思っていた自分が甘かったのだと気づきました。
特に、「保育士という職業」と「自分の子育て」は、相反するものが多い。保育園では「12人の子どもをプロとして見る」ことを求められる。一方、自分の子どもは「特別な関係」です。その「プロ性」と「親の心情」の違いを、毎日経験していました。
保育園では「子どもをコントロールする」という側面があります。例えば、「この時間は、皆で食事」「この時間は、皆で昼寝」。一方、自分の子どもに対しては「この子の意志を尊重する」「この子のペースを尊重する」という向き合い方をしたい。
その矛盾が、心を疲弊させていました。
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退職の決断
7月。子どもの発熱が続きました。病院に行ったら、「特に病気はない。ストレスかもしれません」と医者に言われました。
その時点で、「自分の子ども、ストレスを抱えている」と気づきました。朝、ママと別れることの不安。保育園での長時間対応。帰宅後も、ママは疲れているから甘える時間が限定されている。その全てが、小さな子どもに負担をかけていました。
「自分の子どもの心身のためにも、退職を選ぶべき」と判断しました。
同時に、「保育士として子どもたちを見ているのに、自分の子どもは『長時間保育園に預ける』という現実。その矛盾が、道徳的に自分と合致していない」という葛藤もありました。
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退職届の提出
8月。園長に「退職を希望する」と伝えました。園長は、かなり驚いていました。「主任としての責任を果たしてほしい」というニュアンスの返答でした。
その気持ちは分かります。でも「園の責任」と「自分の子どもの心身」を秤にかけたとき、自分の子どもを優先するしかありませんでした。
退職届は、9月に提出。12月末での退職を願い出ました。引き継ぎは、3ヶ月かけて丁寧に。後任の主任に、全ての業務をマニュアル化して渡しました。
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退職後の人生
現在、育児専念中です。経済的には、夫の給与と失業保険で生活しています。
娘は、保育園から幼稚園に転園させました。幼稚園は、午前中のみの利用。その間に、保育園の書類作成をしたような家事や自分のリフレッシュ時間を確保できます。帰宅後は、娘とゆっくり過ごすことができます。
娘の発熱も減りました。朝、保育園に行くときの泣きつきも、ほぼなくなりました。「ママ、一緒にいたい」という欲求が、ある程度満たされているのかもしれません。
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育児と仕事の両立について
育児と仕事の両立は、「工夫と努力で可能」という言説が、世間に溢れています。ただ、実際には、「本当の両立は、物理的に難しい」というのが、私の結論です。
特に、保育士という職業は、「自分の子どもを長時間預けながら、他人の子どもを全力で見る」ことを求められます。その矛盾を受け入れられるなら、両立は可能かもしれません。
でも、私は、その矛盾を受け入れられませんでした。
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他の育児中の保育士へ
育児と仕事の両立で悩んでいる保育士に、伝えたいことがあります。
「両立できないこと」は、「あなたの努力が足りない」ことの証拠ではなく、「その職業と育児の相性の問題」かもしれません。
保育士は、素晴らしい職業です。でも、自分の子育てとの両立を優先することは、「職業を放棄する」ことではなく、「人生の優先順位を決める」ことです。
その判断を、大切にしてください。