体験者プロフィール

  • Oさん(30歳)
  • 経験年数:9年(同じ法人内で2園経験)
  • 前職:社会福祉法人運営の認可保育園の副主任保育士
  • 現職:企業主導型保育施設の運営責任者

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園長による経営方針と現場のギャップ

私が最初に配置された園の園長は、「子ども第一」というスローガンの下、かなり独断的な経営をしていました。

例えば、「布おむつを使う」という方針。確かに環境配慮は大事です。でも、保育士の負担は激増します。毎日、布おむつを洗濯し、干し、たたむ。その時間は、子どもと関わる時間を削減します。

「布おむつは子どもの発達に良い」という園長の信念でしたが、医学的根拠は曖昧。紙おむつメーカーの研究でも「布・紙の発達への差異はない」と報告されています。にもかかわらず、「園長の信念だから」という理由で、保育士全員が布おむつ対応を強いられました。

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法令違反と不適切な対応

もっと深刻だったのが、法令違反です。

配置基準について、「保育士1人あたりの子ども数」は法律で決まっています。0歳児は3人に保育士1人、1歳児は6人に保育士1人、2歳児は6人に保育士1人。

でも、その園では、「昼間は配置基準を守るが、朝7時30分から朝8時30分の1時間は、配置基準を無視する」という運用をしていました。その時間、保育士1人で15人の子どもを見るんです。法律違反です。

同僚と「これ、違法じゃないですか?」と話しました。でも、「園長の判断だから」「法人として承認されているから」という返答でした。

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改善要求と約束の不履行

6年目。副主任に昇進した時点で、園長に改善を申し入れました。

「朝の時間帯の配置基準遵守」「布おむつの廃止」「保育士の研修時間確保」の3点です。

園長の返答は、「わかった。来年度から改善する」でした。ただ、「来年度」が来ても、何も変わりません。翌々年度も変わらない。「来年度改善」という約束が、延々と繰り返されました。

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別の園への異動と新たな問題

7年目に、法人内の別の園に異動しました。「新しい環境で、改善が期待できるかも」という淡い期待でした。

ところが、この園の園長はもっと問題がありました。

この園長は、「保護者クレーム対応」を理由に、不適切な対応をしていました。例えば、保護者から「この先生は、うちの子に厳しすぎる」という意見が出ると、その先生を配置から外すんです。保育内容の改善ではなく、「先生の交代」で解決する。

その結果、「クレームを恐れる保育士」が増えました。子どもに必要な指導も、「保護者に怒られるから」という理由で避けられました。

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限界の瞬間

9年目の春。新年度の保育方針説明会で、園長は「今年は『自主性を育てる』が方針。子どもの自由を最優先に」と言いました。

でも現場では、「安全第一」「事故ゼロ」という指示も同時に出されていました。「自由」と「安全管理」は時に矛盾します。その矛盾の中で、保育士は迷い続けました。

ある日、2歳児が階段から転落し、たんこぶができました。保護者からクレームが来ました。園長は、「事故報告をしなかった保育士が悪い」と言いました。いや、待てよ。事故報告は、園長に報告しました。その後、園長は保護者に連絡したんですが…。

その時、「この園長は、全部を現場のせいにする」と気づきました。

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退職の決断

その夜、「もう終わりにしよう」と決めました。

園長と法人は、表面的には「保育第一」と言いながら、実際は「自分たちの経営判断の正当性」を優先している。その矛盾の中で、保育士は消耗し続けます。

正直、辞めるまで「保育士は天職だと思っていた」んです。でも、この環境では「保育」ができていない。それなら、環境を変えるべきです。

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退職届の提出

9年目の初夏。園長に辞意を伝えました。園長は「何か問題ですか?」と聞きました。

正直に答えました。「園の運営方針と、現場のギャップが大きく、葛藤し続けています。申し訳ありませんが、別の環境での仕事を探したいので、年度末での退職を願います」

園長は「何か改善できることがあれば」と言いました。でも「改善」は、表面的な対応では無理だと知っていたので、「ありがとうございます。申し訳ありませんが」とお断りしました。

退職届は9月に提出。12月末での退職を願い出ました。引き継ぎは2ヶ月かけて、丁寧に実施しました。

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現在のキャリア

現在は、企業主導型保育施設の運営責任者をしています。年収480万円。

企業主導型保育施設は、企業が従業員の子どもを預ける保育施設です。社会福祉法人の保育園とは異なり、経営判断が明確です。「利益を上げる」という目標と「保育の質」のバランスを、どう取るのかが、経営方針として明確に示されます。

そのおかげで、「曖昧な経営方針」に悩むことがありません。園長は私ですが、企業の経営層が経営方針を示してくれるので、その方針の下で保育を実施します。

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園長問題についての考察

保育業界では、「園長個人の力」が大きすぎます。園長が独断的だと、園全体が被害を受けます。

理想的には、「経営委員会」「運営委員会」など、園長の判断に制度的なチェック機能があるべきです。でも、多くの社会福祉法人では、園長の権限が強く、その判断が絶対視されます。

保育士個人が園長と対抗することは、ほぼ不可能です。だから、「園長が問題」と気づいたら、その環境から離れることが、最も賢い選択だと思います。

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他の保育士へのメッセージ

園長との関係が悪い、経営方針に納得がいかない…そう感じたら、それはあなたの「感性」が正しい証拠です。

保育業界は「環境に適応すること」を美化する傾向があります。でも、不適切な環境に適応することは、「保育の質を下げる」ことと同義です。

自分の職業判断を信じてください。そして、必要なら、別の環境を探してください。