# 父の介護と夜勤の両立が限界に、退職を選んだ決断

  • 名前: D.Iさん(仮名)
  • 年齢: 36歳
  • 経験年数: 10年(電子部品製造)
  • 勤務先: メーカーの製造ライン

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Q: 介護が始まったきっかけは何でしたか?

入社8年目に、実家で一人暮らしをしていた父が脳梗塞で倒れました。命は助かりましたが、左半身に麻痺が残り、要介護3の認定を受けました。

母は私が子どもの頃に他界しており、兄弟もいません。父の介護は実質的に私一人でやるしかありませんでした。最初は介護サービス(デイサービス週3回、訪問介護週2回)を利用しながら仕事を続けようとしました。

Q: 仕事との両立はどのくらい持ちましたか?

2年ほど頑張りましたが、限界でした。最大の問題は夜勤です。夜勤の週は17時に家を出て翌朝8時に帰宅するのですが、その間に父が一人でトイレに行こうとして転倒することが何度もありました。

夜間対応の訪問介護を手配しましたが、毎日は利用できません。夜勤中にケアマネージャーから「お父様が転倒されました」と電話がかかってくることもありました。工場のラインは途中で抜けられないので、勤務終了まで心配で生きた心地がしませんでした。

日勤の週でも、出勤前の朝食介助と服薬管理、帰宅後の夕食介助と入浴介助で、自分の時間はほぼゼロ。睡眠時間は4〜5時間まで減りました。

Q: 会社に相談はしましたか?

介護休業制度(93日間)は利用しました。父が倒れた直後に3ヶ月間取得して、介護の体制を整えました。復帰後は日勤固定への配置転換を申し出ましたが、「日勤のポストは定年近い人で埋まっている」と断られました。

介護短時間勤務制度もありましたが、工場のラインは「定時まで全員揃っていること」が前提なので、実質的に使えない雰囲気でした。使おうとした人が周囲から白い目で見られたという話も聞いていました。

Q: 退職を決めた決め手は何でしたか?

ある夜勤中に、父が浴室で転倒して救急搬送されたと連絡がありました。幸い大事には至りませんでしたが、病院に駆けつけた時に「自分は何をしているんだろう」と思いました。

父の介護を他人に任せきりにして工場で働いている意味があるのか。父がまた倒れて、次は命に関わったらどうするのか。考えた末に、退職を決めました。

経済的な不安はありましたが、介護離職者向けの支援制度(特定理由離職者として失業保険の即時受給)があることをハローワークで確認できたのが安心材料になりました。

Q: 退職届はどう出しましたか?

製造課長に口頭で「父の介護のため退職したい」と伝えました。課長は「何とかならないか」と引き止めてくれましたが、「日勤固定ができない以上、続けることは不可能です」と答えました。

退職届は翌週に提出しました。退職理由は「家族の介護に専念するため」と口頭で伝え、退職届自体には「一身上の都合」と記載しました。退職日は1ヶ月後に設定しました。

引き継ぎでは、担当していた設備の操作マニュアルと日常点検チェックシートを更新して後任に渡しました。また、10年分のトラブル対応のノウハウをまとめた資料も作成しました。

Q: 退職後の生活はどうですか?

退職後は父の介護に専念しながら、在宅でできる仕事を探しました。今はWebライティングの仕事を在宅で受注しています。工場勤務時代の知識を活かして、製造業関連の記事を書いています。収入は前職の半分以下ですが、父のそばにいられる安心感のほうが大きいです。

介護と仕事の両立に悩んでいる方は、まずケアマネージャーと「使える制度」を全て洗い出してください。介護休業給付金、高額介護サービス費、特別障害者手当など、知らない制度がたくさんあります。それでも無理なら、退職は恥ずかしいことではありません。家族を大切にする決断です。