化学物質や粉塵にさらされる環境で働き、健康被害が出ている製造業の方へ、退職手順と労災申請について解説します。

工場で起こりやすい化学物質・粉塵の健康被害

原因物質主な症状代表的な業種
有機溶剤頭痛、めまい、肝機能障害塗装、印刷、接着
粉塵(じん肺)慢性的な咳、息切れ鋳造、研磨、セメント
石綿(アスベスト)中皮腫、肺がん建材製造、解体
貧血、腹痛、神経障害バッテリー製造、はんだ

退職の前に労災申請を検討する

健康被害が業務に起因する場合、在職中に労災申請を行うのが最も有利です。

労災が認定されると

  • 治療費が全額補償される(労災保険の療養補償給付)
  • 休業中は給与の約80%が支給される(休業補償給付)
  • 後遺障害が残った場合は障害補償給付を受けられる
  • 退職後も治療が必要な場合は補償が継続される

労災申請の手順

  1. 1 医師の診断を受け、業務との因果関係を記載した診断書をもらう
  2. 2 会社に労災の「療養補償給付請求書」への事業主証明を依頼
  3. 3 会社が証明を拒否した場合は、事業主証明なしでも労基署に直接提出可能
  4. 4 労基署が調査し、労災認定の可否を決定

退職届の書き方

健康被害が理由でも、退職届には「体調不良により業務の継続が困難となりましたので」と記載するのが一般的です。化学物質名や具体的な症状を退職届に書く必要はありません。

失業保険の扱い

体調不良による退職は、「正当な理由のある自己都合退職」として特定理由離職者に該当する可能性があります。医師の診断書をハローワークに提出することで、給付制限なしで失業保険を受給できます。

退職後も受けられる補償

  • 労災認定を受けていれば、退職後も治療費・休業補償は継続
  • じん肺は退職後に発症することもあり、退職後の申請も可能
  • 石綿健康被害救済制度による給付(アスベスト関連疾患)

証拠の保全

退職前に以下の証拠を確保しておきましょう。

  • 作業環境測定の結果(会社に開示を求める)
  • 使用した化学物質のSDS(安全データシート)
  • 健康診断の結果(特殊健康診断を含む)
  • 防護具の支給状況の記録

まとめ

化学物質や粉塵による健康被害は、自分の責任ではなく作業環境の問題です。退職する前に労災申請を検討し、正当な補償を受ける権利を確保しましょう。