インタビュー対象者プロフィール
- 名前: 佐藤 陽菜さん(仮名)
- 年齢: 29歳
- 経験年数: 美容師歴7年
- 勤務先: サロン
- 役職: スタイリスト
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Q: どのような人間関係の問題がありましたか?
入社当初はアシスタントとして先輩に教えてもらう立場で、厳しい指導も「成長のため」と思って耐えていました。でも、スタイリストとしてデビューしてからが本当につらかったです。
店長の下にいるベテランスタイリストの方が、私に対してだけ明らかに態度が違ったんです。お客様の前で「その切り方ありえない」と言われたり、私の指名客が来ると露骨に嫌な顔をしたり。材料の発注ミスを私のせいにされたこともありました。
他のスタッフも見て見ぬふりで、誰にも相談できない状況が続きました。
Q: 我慢の限界を感じたのはいつですか?
決定的だったのは、お客様からのクレームを全部私に押し付けられた時です。実際にはその先輩がカラーの調合を間違えたのに、私がやったことにされて、店長からも叱られました。その日の夜、帰宅してから涙が止まらなくなって、「もうここにいたら壊れる」と思いました。
それから毎朝サロンに行くのが怖くなって、駐車場で10分くらい車の中で動けなくなることが増えました。接客中は笑顔でいるけど、裏では胃が痛くて食欲もなくなっていました。
Q: 誰かに相談はしましたか?
最初は同期の美容師友達に電話で相談しました。「それ完全にパワハラだよ」と言ってくれて、労働基準監督署にも相談できると教えてもらいました。実際に地域の労働相談窓口に電話したら、「記録を残しておくように」とアドバイスされて、それからスマホのメモに日時と内容を記録するようにしました。
ただ、個人経営のサロンにはハラスメント相談窓口なんてありませんし、店長に言っても「うまくやってよ」で終わりでした。組織として解決する力がなかったんだと思います。
Q: 退職を決断してからの行動を教えてください。
まず転職先を探しました。もう同じサロンでは限界だったので、とにかく環境を変えたかった。友人が働いているサロンが人を募集していたので、見学に行って雰囲気を確認しました。スタッフ同士が和やかに話している様子を見て「ここなら大丈夫かも」と感じ、面接を受けて内定をもらいました。
内定が出た翌週、営業後に店長に「退職したい」と伝えました。理由は「一身上の都合」としか言いませんでした。パワハラのことを言うと揉めると思ったからです。店長には「引き止め」もされましたが、気持ちは固まっていたので丁重にお断りしました。
Q: 退職届の書き方で工夫した点はありますか?
退職届には余計なことは一切書きませんでした。理由は「一身上の都合」、退職日は1ヶ月後の日付。感情的なことは書かず、事務的に。手書きで縦書き、白封筒に入れて店長に直接手渡しました。
パワハラの記録は、退職届とは別に保管しています。万が一、退職後に嫌がらせがあった場合に備えてです。結果的にはそれを使うことはありませんでしたが、記録を残しておくことで自分の心の支えにもなりました。
Q: 退職後、気持ちの変化はありましたか?
退職日の夜、家に帰って「明日からあのサロンに行かなくていい」と思った瞬間、体の力が抜けて泣きました。安堵の涙でした。
転職先のサロンでは、スタッフ全員が対等に意見を言える雰囲気で、何か問題があればミーティングで話し合います。それが当たり前のことなのに、前の職場ではできなかった。人間関係で悩んでいた3年間がもったいなかったと思いますが、あの経験があったからこそ、今の環境のありがたみが分かります。
Q: 同じように悩んでいる美容師へのアドバイスをお願いします。
「石の上にも三年」とか「どこに行っても同じ」なんて言葉を真に受けないでほしいです。パワハラは我慢するものではありません。まず記録を残すこと、外部の相談窓口を利用すること、そして自分を守るために逃げることは悪いことではないと知ってほしいです。
退職届を出すのは勇気がいりますが、あなたの人生はそのサロンだけではありません。美容師の求人はたくさんあります。環境を変えるだけで、こんなにも楽しく働けるんだと実感しています。