インタビュー対象者プロフィール
- 名前: 中村 あゆみさん(仮名)
- 年齢: 32歳
- 経験年数: 美容師歴10年(うち産休・育休1年半)
- 勤務先: サロン
- 役職: スタイリスト
- 家族構成: 夫、子ども2歳
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Q: 出産前の働き方はどのようなものでしたか?
出産前は朝9時から夜8時まで、土日祝日もフル出勤でした。美容師ってお客様の都合に合わせるので、どうしても勤務時間が長くなるんです。それに加えて閉店後の練習会や、休日の撮影会もあって。忙しいけど充実していて、指名客も100名を超えていました。
「結婚しても子どもができても、美容師は続ける」とずっと思っていました。でも、現実は甘くなかったです。
Q: 産休・育休後の復帰はスムーズでしたか?
育休を1年半取って復帰しましたが、最初から壁だらけでした。時短勤務で9時半から16時までの契約にしてもらったんですが、美容師の仕事って「16時に帰ります」で終われないんですよね。16時にカラーの途中のお客様がいたら放り出せないし、予約が詰まっていると昼休憩も取れない。
実質的に17時、18時になることもしばしばで、保育園のお迎えに間に合わないことが月に何度もありました。そのたびに夫や実母に頼んでいましたが、夫も仕事があるし、実母も毎回は無理。罪悪感でいっぱいでした。
Q: サロン側の対応はどうでしたか?
オーナーは理解のある方で、時短勤務を認めてくれたこと自体はありがたかったです。でも、小さなサロンなので「一人抜けるとシフトが回らない」という現実があって。他のスタッフに負担がかかっているのは明らかでした。
土日に出勤できないことも大きかったです。美容師にとって土日は稼ぎ時。私が土日に入れないぶん、他のスタッフが休めなくなっていて。直接文句を言われたわけではないですが、空気は感じていました。
Q: 退職を決断したきっかけは何ですか?
子どもが熱を出して保育園から呼び出されたとき、ちょうど予約が3件入っていて。他のスタッフに代わってもらったんですが、そのとき後輩に「また早退ですか」と言われて。悪気はなかったかもしれないけど、その一言で「私がいることで周りに迷惑をかけている」と確信しました。
帰宅して熱のある子どもを抱きながら、「この子の一番大事な時期に、こんなに余裕のない状態でいいのだろうか」と。夫と話し合って、子どもが小学校に上がるまでは美容師を離れようと決めました。
Q: 退職届はどう提出しましたか?
オーナーには1ヶ月半前に口頭で伝えました。理由は「育児に専念したい」と正直に話しました。オーナーは「残念だけど、お子さんとの時間は今しかないからね」と言ってくれて、涙が出そうでした。
退職届は「一身上の都合」で提出。指名客への引き継ぎは1ヶ月かけてゆっくり行いました。お客様にはLINEで一人ひとりメッセージを送って、後任のスタイリストを紹介しました。
Q: 退職後の生活はどうですか?
最初の3ヶ月は、子どもとべったり過ごせることが嬉しくて、退職してよかったと心から思いました。公園に行ったり、図書館に行ったり、当たり前のことがこんなに幸せだなんて。
収入面では夫の収入だけになったので正直厳しい部分もありますが、週2回、知人のサロンでパートとして働かせてもらっています。保育園に預けている間だけの短時間なので、無理なく続けられています。将来的には、自宅の一室でプライベートサロンを開く計画も立てています。
Q: 育児と美容師の両立で悩んでいる方にアドバイスはありますか?
「全部完璧にやろうとしない」ことが大事です。私は仕事も育児も中途半端になっている自分が許せなくて追い詰められましたが、そもそも美容師の働き方と育児の両立はハードルが高すぎるんです。
退職は「キャリアの終わり」ではありません。美容師免許は一生有効ですし、技術はブランクがあっても戻ります。子どもの成長に合わせて、パート、面貸し、フリーランス、自宅サロンなど、働き方の選択肢は豊富です。
退職届を出すときは、感謝の気持ちを伝えることを忘れずに。お世話になったサロンとの関係を良好に保っておくと、将来復帰する際に力になってくれることもあります。