インタビュー対象者プロフィール
- 名前: 山田 翔太さん(仮名)
- 年齢: 28歳
- 経験年数: 美容師歴6年
- 勤務先: サロン
- 役職: スタイリスト
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Q: 体調を崩したのはいつ頃からですか?
アシスタント時代からシャンプーによる手荒れはありました。最初は軽い乾燥程度だったんですが、スタイリストになってカラー剤を扱う頻度が増えてから一気に悪化しました。5年目の冬に、両手がひび割れて血が出るようになって、手袋をしないと施術できない状態になりました。
同時に腰痛もひどくなってきて。美容師って一日中立ちっぱなしで、しかも前かがみの姿勢が多いので、腰への負担がすごいんです。朝起き上がるのに5分かかる日もありました。
Q: 病院にはかかりましたか?
皮膚科には定期的に通っていました。ステロイドの塗り薬をもらって、一時的には良くなるんですが、仕事に戻るとまた悪化の繰り返し。先生には「原因物質(カラー剤・パーマ液)との接触を避けないと根本的には治らない」と言われていました。つまり、美容師を続ける限り完治は難しいと。
腰痛は整形外科でヘルニアの一歩手前と診断されました。「このまま同じ働き方を続けると手術が必要になる可能性がある」と言われて、さすがに怖くなりました。
Q: 休職は検討しましたか?
検討はしましたが、うちのサロンは個人経営に近い中規模チェーンで、休職制度がほぼ形だけでした。実際に休職した先輩もいなくて。店長に相談したら「有給で1週間くらいなら」と言われたんですが、1週間休んだところで手荒れが治るわけないんですよね。
結局、「休職しても復帰したらまた同じことの繰り返し」と考えて、退職を選びました。体が資本の仕事で、体を壊してまで続ける意味はないと思ったんです。
Q: 退職の意思はどう伝えましたか?
店長には診断書を見せながら説明しました。「手荒れとヘルニアで、医師からも業務継続は難しいと言われている」と。診断書があると話がスムーズでした。店長も手荒れで辞める美容師を何人も見てきたそうで、「体が大事だから」と理解してくれました。
退職届には「体調不良により業務の継続が困難となりましたので」という理由を書きました。「一身上の都合」でもよかったのですが、体調不良による退職であることを明確にしておきたかったんです。失業保険の手続きでも有利になる場合があると聞いたので。
Q: 退職後の回復はどうでしたか?
退職してから3ヶ月くらいで手荒れはかなり改善しました。カラー剤に触れなくなっただけで、こんなに違うのかと驚きました。腰痛も、立ち仕事をしなくなってリハビリに通ったことで、半年後にはほぼ痛みがなくなりました。
退職直後は「自分は美容師として失格だ」と落ち込みました。でも、美容師の知識を活かしてヘアケア用品のメーカーに転職できて、今はデスクワーク中心で体の負担なく働けています。施術はできなくなりましたが、美容の知識は無駄になりませんでした。
Q: 体調不良で退職を考えている美容師にアドバイスはありますか?
まず、早めに病院に行って診断書をもらうこと。自己判断で「まだ大丈夫」と無理すると、取り返しがつかなくなります。私ももう少し早く決断していれば、ヘルニアまで悪化させずに済んだかもしれません。
次に、美容師以外のキャリアも視野に入れること。美容メーカー、美容部員、ヘアケアメディアのライター、美容学校の講師など、美容師の経験を活かせる仕事はたくさんあります。
最後に、退職は「逃げ」ではなく「戦略的撤退」です。体を壊してからでは遅いんです。健康な体があってこそ、次のキャリアに進めます。