インタビュー対象者プロフィール
- 名前: 鈴木 健太さん(仮名)
- 年齢: 30歳
- 経験年数: 美容師歴9年
- 勤務先: サロン
- 役職: トップスタイリスト
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Q: 待遇面でどのような不満がありましたか?
一番は給料です。トップスタイリストで売上もサロン内で1位だったのに、手取りは22万円。賞与なし、昇給は年に数千円。9年目でこの金額かと。大学に行った同級生たちが30歳で年収500万円、600万円ともらっているのに、自分は年収300万円程度。正直、惨めに感じることもありました。
社会保険も加入していなくて、国民健康保険と国民年金を自分で払っていました。将来の年金額を計算したとき、「これでは老後に生活できない」と愕然としました。
Q: 美容師業界の将来性をどう感じていましたか?
美容室の数はコンビニより多いと言われていて、競争は激化する一方です。1,000円カットの台頭、人口減少、SNSで個人が発信できる時代になって大型サロンの集客力も落ちてきている。自分のサロンも売上は年々微減でした。
独立も考えましたが、開業資金は最低500万円、しかも美容室の3年以内の廃業率は高い。リスクを取って独立するより、安定した業界に移ったほうがいいのではないかと考えるようになりました。
Q: 異業種への転職に不安はありませんでしたか?
ものすごく不安でした。美容師しかやったことがないので、「自分にできる仕事があるのか」と。30歳で未経験というのも引っかかりました。
でも、転職エージェントに相談したら、「美容師の経験はコミュニケーション力、接客スキル、提案力として評価される」と言ってもらえて。実際に営業職やサービス業の求人で「接客経験者優遇」というのが多くて、美容師の経験も武器になると分かりました。
Q: 転職活動はどう進めましたか?
大手転職エージェント2社に登録しました。担当のアドバイザーに美容師としての実績(指名客数、売上実績、コンテスト入賞歴)を伝えたら、「数字で成果を語れるのは強い」と言われました。
面接対策では、美容師時代のエピソードを「課題発見 → 提案 → 結果」のフレームワークで整理しました。例えば「リピート率が低い客層に対して、ヘアケアのアドバイスカードを作成し、リピート率を20%向上させた」など。これが面接でかなり効きました。
最終的に、IT企業のカスタマーサクセス職に内定。年収は420万円で、美容師時代から120万円以上のアップでした。
Q: 退職届の提出と引き継ぎはどうでしたか?
オーナーには2ヶ月前に伝えました。地方の小さなサロンで、オーナーとは師弟関係に近かったので、伝えるのは本当につらかったです。「裏切り」と思われるかもしれないと。
でもオーナーは「健太の人生だから、応援する。ただし、お客様にはちゃんと挨拶してほしい」と言ってくれました。退職届は「一身上の都合」で、1ヶ月半の引き継ぎ期間を設けました。指名客には直接会って事情を説明し、後任を紹介しました。
最終日には菓子折りを持っていって、一人ひとりに手紙を書いて渡しました。泣きそうになりましたが、笑顔で「ありがとうございました」と言って退勤しました。
Q: 転職後の生活はどう変わりましたか?
まず、土日が休みになったことが衝撃でした。友達と予定が合う。家族と過ごせる。当たり前のことが当たり前にできる幸せ。
年収も大幅アップして、社会保険完備、有給も取りやすい。将来への不安が大きく減りました。仕事内容もやりがいがあって、お客様の課題解決という点では美容師時代と共通する部分もあります。
美容師を辞めたことに後悔はありません。ただ、ハサミを握っていたときの楽しさは今でも思い出します。それは「辞めなければよかった」ではなく、「いい時間だった」という感覚です。
Q: 待遇に不満を持っている美容師にアドバイスはありますか?
まず、自分の市場価値を知ることです。転職エージェントに登録するだけでも、自分がどれくらいの年収で転職できるのかが分かります。美容師の中にいると「給料が低いのは当たり前」と思ってしまいますが、外の世界を見れば選択肢は広がります。
異業種転職は30歳前後がラストチャンスに近いので、悩んでいるなら早めに動くべきです。35歳を超えると未経験での転職は難しくなります。
そして、退職する際はオーナーや同僚への感謝を忘れずに。美容師業界は人のつながりが強いので、円満退職を心がけましょう。退職届は事務的に、でも気持ちは温かく。それが次のキャリアでも良い影響を与えてくれます。