# 子育てと調剤薬局の両立に限界|薬剤師9年目で退職した理由

インタビュー対象者プロフィール

  • 名前: 高橋 由美さん(仮名)
  • 年齢: 33歳
  • 経験年数: 調剤薬局 薬剤師 9年
  • 勤務先: 調剤薬局チェーン
  • 家族構成: 夫(薬剤師・病院勤務)、長女2歳
  • 現在: 在宅での医薬品情報提供サービスを運営

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Q: 育児と調剤薬局の仕事の両立は、どこが大変でしたか?

出産後、1年間の育休を取得して復帰しました。会社に時短勤務を申請して、9時〜16時の勤務にしてもらいました。

問題は、調剤薬局の「時短」が機能しないことです。16時に帰ろうとしても、処方箋が途切れなければ帰れません。「この患者さんだけお願い」と言われて、気づいたら17時、18時になることが常でした。門前の病院が混んでいると、午後の遅い時間に処方箋が集中するので、まさに帰りたい時間帯がピークなんです。

保育園のお迎えは18時半がリミットなのに、間に合わない日が月に5〜6回。延長保育の料金も馬鹿になりませんでした。

Q: 会社に改善を求めましたか?

時短勤務中は調剤報酬が出る業務から外してほしいとか、処方箋の少ない店舗に異動させてほしいとか、いくつか相談しました。でも、どの店舗も薬剤師が足りていないので、異動は難しいと言われました。

一番つらかったのは、「時短の人の分を他のスタッフがカバーしている」という空気です。同僚は言葉に出しませんが、私が帰った後に残りの業務を引き受けてくれている。その申し訳なさが精神的にきつかったです。

夫も病院薬剤師で当直があるので、保育園の呼び出し対応は常に私。子どもが熱を出すたびに「すみません、早退します」と言わなければならない。月に2〜3回はそういう日がありました。

Q: 退職を決めたきっかけは何ですか?

長女が保育園に通い始めて半年間、月の半分は体調を崩していました。RSウイルスで入院した時に、「自分は何をしているんだろう」と思ったんです。

病室で点滴を受ける娘を見ながら、職場に「明日も出勤できません」と電話している自分が情けなくて。子どもの看病より仕事の心配をしている自分に嫌気がさしました。

夫と話し合って、「今は育児を優先しよう。薬剤師免許があれば、いつでも復帰できる」という結論になりました。

Q: 退職の手続きはスムーズでしたか?

2ヶ月前にエリアマネージャーに退職の意思を伝えました。やはり慰留されました。「パートに切り替えるのはどうか」「週3日勤務なら対応できないか」と提案されましたが、週3日でも調剤薬局の拘束時間を考えると育児との両立は難しいと判断しました。

退職届は会社の書式に従って提出しました。退職日は月末に設定して、社会保険の切り替えがスムーズになるよう配慮しました。月の途中で退職すると、その月の社会保険料が日割りにならず全額かかる場合があるので注意が必要です。

薬剤師特有の手続きとして、薬剤師届出の勤務先変更を厚生労働省に届け出る必要があります(2年ごとの届出時)。退職して勤務していない場合は「無職」として届出ます。届出を怠ると罰則の対象になるので忘れないでください。

Q: 退職後の収入面はどう対処しましたか?

夫の収入(約550万円)だけでの生活は厳しいですが、退職金が約180万円あったのと、貯蓄があったので当面は問題ありませんでした。

退職後3ヶ月目から、薬局やクリニック向けの医薬品情報提供サービスを個人で始めました。DIの経験を活かして、最新の添付文書改訂情報やガイドラインの変更点をまとめた資料を有料で提供しています。在宅でできるので、育児の合間に作業できます。月収は10〜15万円程度ですが、専門スキルを活かせる充実感があります。

Q: 退職して後悔はありますか?

全く後悔していません。長女と過ごす時間が増えて、成長の一瞬一瞬を見逃さずに済んでいます。

ただ、キャリアの中断に対する不安はゼロではありません。調剤の現場は日々変わっていくので、ブランクが長くなると復帰のハードルが上がるのも事実です。そのため、薬剤師向けの研修やe-learningは継続して受講しています。認定薬剤師の資格も維持しています。

Q: 同じ状況の薬剤師にアドバイスをお願いします。

まず、退職以外の選択肢を全て検討してください。パート勤務への切り替え、他チェーンへの転職(福利厚生が充実しているところ)、派遣薬剤師への切り替えなど、フルタイム退職以外の道もあります。

特に派遣薬剤師は時給が高く(2,500〜3,500円程度)、勤務日数も選べるので、育児中の薬剤師には良い選択肢です。ただし、キャリアの一貫性が途切れるデメリットもあるので、将来の見通しを持った上で判断してください。

退職を決めたら、このサイトのテンプレートで退職届を作成し、余裕を持って提出しましょう。引き継ぎ期間は最低1ヶ月は確保すべきです。特に、担当患者の薬歴引き継ぎは丁寧に行ってください。

薬剤師免許は更新制ではないので、退職しても失効しません。子育てが落ち着いたら必ず復帰できます。今は家族との時間を大切にしてください。