# 調剤報酬の引き下げに将来不安|薬剤師10年目で異業種転職
インタビュー対象者プロフィール
- 名前: 伊藤 大介さん(仮名)
- 年齢: 34歳
- 経験年数: 調剤薬局 薬剤師 10年
- 勤務先: 調剤薬局チェーン
- 転職先: 医療系ITベンチャー
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Q: 薬剤師の将来性に不安を感じ始めたのはいつ頃ですか?
7年目くらい、2回目の転職をした頃からです。最初の大手チェーンから中小チェーンに移った時点で、「調剤薬局は儲かる時代が終わった」と実感しました。
調剤報酬改定のたびに薬局の収入は下がり続けています。特に処方箋1枚あたりの収益が減少しているのに、求められる業務(かかりつけ薬剤師、在宅対応、地域連携など)は増え続ける。薬局経営者が苦しくなれば、当然従業員の待遇にも影響します。
10年目で年収は約530万円でした。管理薬剤師手当を含めてもこの金額。大学時代の6年間と1,200万円以上の学費を考えると、投資対効果に疑問を感じざるを得ませんでした。
Q: 同期の薬剤師と比較してどう感じていましたか?
薬学部の同期は、病院薬剤師、MR、公務員(薬事行政)など様々なキャリアを歩んでいます。製薬企業に進んだ同期は年収800万円超え。CRO(治験受託機関)に転職した同期も700万円以上。一方、調剤薬局一筋の自分は500万円台。この差は正直堪えました。
「薬剤師は安定した職業」と言われますが、安定していると感じたことは一度もありません。処方箋枚数に収入が左右されるし、門前の病院が閉院すれば薬局も潰れる。実際に、私が勤務していたチェーンも2店舗が閉鎖になりました。
Q: 薬剤師の仕事自体への不満もありましたか?
仕事内容への不満もありました。10年間調剤業務をしてきて、「自分は処方箋を右から左に流す作業員ではないか」と感じる瞬間が増えました。
もちろん、服薬指導やかかりつけ薬剤師としての役割にはやりがいがあります。でも、AIや機械化が進めば、調剤業務の多くは自動化される可能性が高い。実際に調剤ロボットを導入する薬局も増えています。対人業務が残るとしても、それだけで今の人数の薬剤師が必要なのか、疑問でした。
Q: 異業種への転職をどう進めましたか?
最初は製薬企業への転職を考えましたが、年齢的に(32歳時点)MRとしてのスタートは遅いと感じました。そこで、自分の調剤経験とITへの関心を組み合わせて、医療系ITベンチャーを探しました。
電子処方箋の普及が進む中で、薬局と医療機関をつなぐシステム開発を手がける企業に興味を持ちました。プログラミングの経験はありませんでしたが、「薬局現場の業務フローを熟知している」という点が評価されて、プロダクトマネージャー職で採用されました。
転職活動は約1年かかりました。一般的な転職エージェントに加えて、HealthTech系のスタートアップが集まるイベントにも参加して人脈を広げました。
Q: 退職の手続きと周囲の反応を教えてください。
退職届は3ヶ月前に提出しました。中小チェーンだったので、社長に直接伝えました。「IT企業に転職します」と言ったら、「薬剤師を辞めるのか?もったいない」と驚かれましたが、最終的には理解してくれました。
管理薬剤師の引き継ぎに時間がかかることは分かっていたので、後任の管理薬剤師候補を社内で推薦しました。保健所への届出変更も含めて、退職日までにスムーズに移行できるよう準備しました。
同僚の薬剤師からは「すごい決断だね」「自分にはできない」と言われました。安定を手放すことへの恐怖は理解できますが、「安定」に見えるものが実は不安定だったと今は思います。
Q: 転職後の待遇と働き方の変化を教えてください。
年収は約650万円にアップしました。ストックオプションも付与されているので、会社が成長すればさらなるリターンが期待できます。
働き方の変化は大きいです。フルリモートで、出勤は月に数回のミーティングのみ。白衣を着て一日中立ちっぱなしだった薬局時代とは全く違います。土日は完全に休み。年末年始やGWも普通に休めます。薬局時代は365日誰かがシフトに入らなければならなかったので、長期休暇は夢のような話でした。
Q: 薬剤師を辞めて後悔はないですか?
後悔は全くありません。むしろ、もっと早く動くべきだったと思います。ただし、薬剤師免許は維持しています。2年ごとの届出もきちんと行っています。将来的に薬局に戻る選択肢を残しておくことは大切です。
薬剤師で将来に不安を感じている方に伝えたいのは、「薬剤師免許は保険として持っておいて、他のフィールドに挑戦する」という選択肢があるということです。調剤経験は、医療系IT、製薬企業、医療コンサル、保険会社など、多くの業界で評価されます。
退職届の準備はこのサイトのテンプレートで簡単にできます。管理薬剤師の方は、後任の確保と保健所届出の期間を考慮して、退職日の少なくとも2〜3ヶ月前には退職の意思を伝えてください。
「薬剤師しかできない」と思い込む必要はありません。6年間の薬学教育と臨床経験で培った論理的思考力、コミュニケーション力、リスク管理能力は、どの業界でも通用するスキルです。